Green Futureレポート
ウエリスオリーブ成城学園前
ウエリス仙川調布の森
サービス付き高齢者向け住宅と分譲住宅の一体開発によって、幅広い世代の方々が「長く、共に、心地よく」暮らせる住まいづくりを実現する、NTTアーバンソリューションズグループの「つなぐTOWNプロジェクト」。 その第5弾として2019年に完成した「ウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森」は、武蔵野の森が色濃く残るエリアでの物件とあって、人と自然とを"つなぐ"さまざまなしくみが凝らされています。
開発前から敷地に
生育していた樹木たちは、
居住者を見守りながら、
土地の記憶をつないでいきます。
ウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森では、
周辺の緑地や雑木林を守り、次の世代へ引き継いでいく取組みが行われました。
開発に際してむやみに樹木を伐採することを避け、
既存樹をランドスケープにうまく活かしています。
ウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森の開発予定地には、約140本の木がありました。 現地調査では、この樹木について樹木医が1本ごとに診断評価を行い、寿命や台風などの被害によって朽ちて倒木の危険性が高いと判断された約70本はやむを得ず伐採されました。 そして残すべきと判断された樹木は保存樹として活かし、居住者の方々が緑の潤いを身近に感じられるようにしています。 特に建物のエントランスの左右のクスノキとケヤキは両施設のシンボルツリーとなっています。
6階建ての建物の高さまである保存樹のクスノキの木漏れ陽が優しく降り注ぐ、「つなぐカフェオリーブ」の前のオープンテラス。 多くの居住者にとってお気に入りの場所となっています。
中庭や周囲の樹木には樹種名や特徴説明のプレートを付け、自然や生態系を身近に感じられるように配慮しています。
向かって左がクスノキ、右がケヤキ。下の写真は開発前の2017年に撮影したものですが、共に敷地内のまったく同じ場所に立っていました。
クスノキ(2017年7月撮影)
ケヤキ(2017年7月撮影)
※森は空撮写真(2017年4月撮影)の森をCG加工・合成したもの、建物や中庭は計画段階の図面を基に描き起こしたもので、実際とは異なります。
さらに敷地内には、調布市との協議によって保存すべきと判断された森がそのまま残されています。 この「みんなの森」や周囲の森は、希少な動植物の生息地でもあります。 国分寺崖線に広がる森については、開発以前から動植物全般の自然環境調査が実施されていますが、キンランやギンラン、イチヤクソウといった、絶滅を危惧されている希少植物が自生していることが確認されています。 また営巣こそ見られなかったものの、オオタカの姿も確認されています。 キンランやギンランはみんなの森の中にも群生地があり、モニタリング調査は開発以後も継続して行っています。
調査で確認された
動植物
キンラン
ギンラン
オオタカ
※動植物の写真はイメージです。
既存樹の保存は、
プロジェクトのコンセプトから必然でした。
既存樹を切らずにできる限りランドスケープとして活かすという取組みは、最近でこそ珍しくなくなってきていますが、このウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森の開発当時はまだあまり一般的ではありませんでした。 しかし、既存樹を残すことで土地の記憶を継承していくことは、人と人、人と地域など、さまざまなものをつないでいくという「つなぐTOWNプロジェクト」のコンセプトにマッチするものでしたので、積極的に行うことにしました。 みんなの森も、親しみを持って長くご利用いただくことで、後世につないでいくことを願っています。
「つなぐTOWN
プロジェクト」とは?
「家族をつなぐ」「居住者同士・地域をつなぐ」「時間(とき)をつなぐ」の3つのコンセプトのもと、家族がずっと心地よく快適に暮らせるよう、未来をしっかりと見つめて開発した「つなぐTOWNプロジェクト」。 分譲マンションとサービス付き高齢者向け住宅を一体開発し、居住者同士のふれあいや地域交流を生み出す仕組みをハード、ソフトの両面から整備することで、"多世代永住型の住まい"を実現しています。 ウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森ではその取組みが高く評価され、公益財団法人日本デザイン振興会主催の「2019年度グッドデザイン賞」を受賞しています。
地域にとって特別な存在である
国分寺崖線の緑に包まれて
日常生活の中で目にする風景、景色を意識してデザインすることは、
住まいづくりにおいて非常に大切です。
ウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森では、
国分寺崖線の豊かな緑を最大限活かした計画を行い、
自然との共生をめざしました。
ウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森が建つ調布市入間町の一帯は、野川に沿って連なる国分寺崖線の一角にあたります。 「崖線」とは、川の流れによって削られた河岸段丘の連なりで、東京都には大小約40カ所の崖線が存在します。 崖線の斜面には豊かな緑が残り、崖線下には多くの湧水や動植物の資源があるため、都市化が進んだ東京の中で貴重な空間となっています。 そこで東京都は崖線の緑を保全するためにガイドラインを策定し、崖線とその周辺を景観形成重点地区として指定しています。 また同様に調布市でも、「庭園のまち調布」の実現をめざし、崖線と一体となった緑を「調布の森」として保全・活用する計画を進めています。
国分寺崖線の森に包まれた高台に建つ、ウエリスオリーブ成城学園前(A)・ウエリス仙川調布の森(B)。開発に際して外縁部の法面の大部分はNTT東日本により調布市に寄付され、保存林となっています。
立川市砂川九番から始まり、国分寺市、調布市、世田谷区などを貫いて、大田区田園調布付近まで続く国分寺崖線。 崖の下を流れる野川は護岸されていない区間も多く、水辺へは多くの野鳥が飛来します。
広大な土地の開発に際してめざしたのは、国分寺崖線の緑や野川などの自然環境を守り、自然環境と調和したゆとりある住環境を備えた街づくり。そして調布市と連携して協議し、動植物の生態の調査や地域の関係者へのヒヤリングなどを重ねた結果、2014年に「入間町周辺地区計画」が策定され、「文教・福祉関連施設ゾーン」と位置付けた土地活用の方向性が調布市から示されました。これを受けて保育園、学校、福祉施設の事業が立案される中、「つなぐTOWNプロジェクト」の開発が行われました。
入間町周辺地区計画
文教・福祉関連施設ゾーン
※計画段階の図面を基に描き起こしたものに、空撮写真(2017年4月撮影)をCG加工・合成したもので、実際とは異なります。
国分寺崖線の斜面を覆う豊かな森は、街の緑の背景となり、景観形成に重要な役割を担っています。 崖線の高台に建つウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森がこの景観と調和し、共生することをめざし、建物の高さや外観に配慮して計画が進められました。 またこの特別な立地の特色を活かすために、敷地内においても豊かな緑を感じながら暮らせる空間づくりと、緑とともにコミュニティが育まれる"つなぐ"仕掛けにこだわっています。
エントランスから吹き抜けのロビーに入ると、目に入ってくるのが「みんなの広場」と名付けられた中庭。 開放的な中庭には、ガーデンキッチンをはじめ、人が集える大小さまざまなスペースが設けられ、居住者同士が自然に交流できる工夫がなされています。
森の緑と調和するように、建物の外壁にはアースカラーを基調とした素材が用いられています。
この地の主役である、
森が持つ力を活かしました。
計画地を初めて見たときの印象は、まさに"調布の森"を感じる圧倒的な緑の量でした。 通常の分譲マンション開発では、基本的にいったん更地にした敷地に新たにランドスケープを計画し外部から運んできた樹木を植え、人工的に緑の空間をつくっていくことが多いです。 しかしウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森は、敷地やその周囲にある既存の緑が主役だと思いました。人工的にはなかなかつくれない、自然の森の力。 その希少性やよさが伝わるものにしたかった。そこで建物計画においては、既存の豊かな樹木をどう取り入れ、活かすかを常に念頭に置いて進めました。
施設内にあるカフェの
家具の木材は、
どこから来たと思いますか?
大規模な施設の開発を行う際には、
どうしても切らなければならない樹木が出る場合があります。
伐採木は、通常は産業廃棄物として処分されますが、
ウエリスオリーブ成城学園前・ウエリス仙川調布の森では、
そうした木を無駄にしない取組みを行いました。
サービス付き高齢者向け住宅「ウエリスオリーブ成城学園前」の1階には、居住者の方々の食事スペースであり、交流の場でもある「つなぐカフェオリーブ」というレストランカフェがあります。 カフェは地域へも開放されていて、誰でもランチやカフェタイムを楽しむことができるほか、併設の「まちライブラリー」でゆっくりと読書をして過ごすこともでき、学校帰りにここに立ち寄る子どもたちもいるそうです。 カフェではワークショップやまちライブラリーの本を通じたイベントも開催され、居住者同士、また居住者と地域の方々の世代を超えた交流に欠かせない拠点となっています。
ゆったりとくつろげる「つなぐカフェオリーブ」。 広々とした空間には、味わいのある木製家具が配置されています。


居住者の各種サークル活動から、地域の方々を交えたワークショップまで、さまざまな催しが開催され、地域の交流の場となっています。

まちライブラリーの蔵書は、居住者や地域の方々が持ち寄ったもの。 本には寄贈者からのメッセージカードが入っており、そこに読んだ人が感想を書いていくことで、人や地域とのつながりが生まれます。
つなぐカフェオリーブには、約80脚のテーブルや椅子があります。 これらの木製家具をはじめ、カフェのカウンターや本棚に使用されているサクラやコナラの木材は、じつはかつてこの地に立っていた開発の際にやむをえず伐採した木です。そのままでは産業廃棄物として処分され、CO2を放出するだけだったかもしれない雑木は、家具として再生されることで新たな命を吹き込まれ、生まれ育ったこの地で人々に愛用されています。 こうして人々に寄り添っていくことで、家具たちは人と土地の記憶を継承し、後世へつないでいくのです。
自然木を使用した椅子たちは、木材の樹種や形状が同じ家具でも、一つひとつ重みが異なります。 すべての椅子の背もたれや手すりは、高齢者や小さなお子さんの使用を考慮して、一つずつ手作業でやすりをかけて面取りしています。 また肌触りを重視してオイルフィニッシュとしています。
伐採された樹木は、北海道旭川市の工場へ送られて木材に加工された後、家具に仕立て上げられました。原木は通常は製材しやすいよう節を避けて切断されますし、商品としての見栄えからも節の部分は使用されません。 しかし伐採木を無駄なく使うため、節も家具の豊かな表情として大事に残しています。 木材は、そのまま無垢材として使用しているものもありますが、それが適わなかったものも薄くスライスして突板(面材)として活用し、できるだけ廃棄を減らすように努めています。
椅子やテーブルとしては使えなかったサクラの木材も、薄くスライスしてベースとなる合板に貼り、突板として活用。 割れ部分を埋めた黒色の樹脂がデザイン上のアクセントとなっています。
コナラを用いたローテーブルや椅子。
伐採木の搬出から家具になるまで
木々の温もりを、家具としてこの場所で地域の方々へ伝えたい。
伐採木の再生プロジェクトは、「つなぐTOWNプロジェクト」第1号として2015年に開業した「ウエリスオリーブ津田沼」に続く2回目の試みです。 自然のままに育った雑木は、家具用に加工しやすいようにまっすぐ育てられた樹木と違って歩留まり率が悪く、3割ほどしか使えません。 そういった面も含めて津田沼の時にはさまざまな苦労があったのですが、調布ではそのノウハウの蓄積があったので比較的スムーズに進めることができました。「この地に育った樹の温もりが家具として生まれ変わり、この場所で時をつなぐシンボルとして地域の方々へ伝えていきたい」という想いではじめた企画ですので、多くの方に末永く使っていただきたいですね。
武蔵野の原風景を今に残すみんなの森。 散策路が整備されているので、居住者は気軽に森林浴や自然観察を楽しむことができます。 森として、シンボルツリーとして、家具として。 ウエリスの森の木々は、こうしてさまざまな形で、いつまでもこの地に暮らす人々と共に在り続けることでしょう。