Green Futureレポート

環境性能と日々の運用で
最高水準の省エネを実現

四季を彩る木々に抱かれた
「品川シーズンテラス」

Shinagawa Season Terrace

全国のさまざまな地域で、個性豊かで活力ある街づくりを進めているNTTアーバンソリューションズ。最先端の技術で、環境にやさしい街づくりに取り組んでいます。ここでは、わたしたちが手がけた各地の建物を訪問。今回は、東京都・芝浦水再生センターの敷地を活用し、官民が連携して誕生した「品川シーズンテラス」をクローズアップします。

物件概要 Property Description

品川シーズンテラス
所在地 東京都港区港南1丁目2番70号
規模 地上32階/地下1階
竣工 2015年2月
事業主 NTT都市開発株式会社 / 大成建設株式会社 / NTT都市開発リート投資法人 / 大成建設プライベート投資法人 / 東京都市開発株式会社 / 東京都下水道局
品川シーズンテラスの外観
品川シーズンテラスのエスカレーター

インタビュー Interview

品川シーズンテラス株式会社 管理部長 重田 廣行 (左端) 管理部 業務部門長 運営部門長 初鹿野 充 (右端) 株式会社NTTファシリティーズ 東日本事業本部 ファシリティソリューション部 総合ファシリティサービス部門 ビルマネジメント担当 担当課長 斉藤 秀成 (中央左) 主査 馬場 将志 (中央右)

話し手

品川シーズンテラス株式会社

管理部長 重田 廣行 (左端)
管理部 業務部門長 運営部門長 初鹿野 充 (右端)

株式会社NTTファシリティーズ

東日本事業本部 ファシリティソリューション部
総合ファシリティサービス部門 ビルマネジメント担当
担当課長 斉藤 秀成 (中央左)
主査 馬場 将志 (中央右)

エコインフラを担う、 トップレベルの環境配慮型オフィスビル

品川シーズンテラスには、多彩な省エネ設備が導入されているそうですね。

ひとつは、建物中央を貫く約130mの吹き抜け「スカイボイド」。太陽光自動追尾採光システムによってビル内に自然光を届け、照明に使う電力を低減する、国内では珍しい設備です。空調には、芝浦水再生センターから供給される下水熱を利用し、空気中に排熱をさせない環境にやさしい仕組みになっています。

夏期には「ナイトパージ制御」を活用。スカイボイドから、気温が下がる夜間の冷たい空気を取り入れることで、翌朝の空調起動時のエネルギー負荷を減らしています。そのほかにも、人検知センサー付きLEDの設置で電力消費を抑えるなど、細かな点にまで省エネ性能に優れた設備を採用したオフィスビルです。

屋上の2/3を占める太陽光パネル
屋上の2/3を占める太陽光パネル
ビル上から太陽光を取り入れるスカイボイド
ビル上から太陽光を取り入れるスカイボイド
スカイボイドを下から見上げる 3階ロビーフロアにつながる吹き抜けまで、反射を利用し太陽光を導く
スカイボイドを下から見上げる
3階ロビーフロアにつながる吹き抜けまで、反射を利用し太陽光を導く

優れた設備を生かして省エネの取り組みを進めた結果、さまざまな機関から環境性能に関する認証を取得されています。

オフィス部分は2019年、国土交通省告示に基づく「ZEB Ready(ゼブレディ)認証」を取得。当時の認証取得建物としては、オフィス部分の面積が国内最大規模でした。標準的な建物と比べて、1 年間のエネルギー消費量を51%削減したことが認められました。また同じ年、東京都から地球温暖化対策の推進の程度が極めて優れた「トップレベル事業所」として認定されています。
さらに2023年には「CASBEE(キャスビー)不動産評価認証」を受けました。これは一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターによる環境性能評価の枠組みで、オフィスビルとしては珍しい90点超えの高評価での取得となりました。もともとの設備のスペックが高いことはもちろん、非構造材への国産木材利用や、太陽光の利用率の高さなどが評価されたと聞いています。

国産木材をビル内のさまざまな箇所に使用
国産木材をビル内のさまざまな箇所に使用

テナントの皆さまと手を携え、 日々続く省エネの取り組み

こうした省エネを実現するために、日々のビル運用でどのようなことに気をつけているのでしょうか。

電気や冷温水使用量などのデータは常に注視し、エネルギー消費をコントロールする努力をしています。例えば夏場、長期休暇明けに各テナント専有部で一斉に空調を使うと、冷水使用量がぐっと増えてしまうんです。それを見越して共有部を早朝から冷やしておくことで、ピーク使用量を抑えるようにしています。こうした取り組みの一方で、テナントとして入居いただいている企業の皆さまの協力も欠かせません。

どのようにテナント企業の協力を得ているのでしょうか。

品川シーズンテラスでは年2回、各企業の総務担当者さまを集めて「省エネ推進委員会」を開催しています。テナントごとの電気使用量などを見える化して示しつつ、専有部で実施できる省エネ施策を提案。先日も、専有部での照明の減光やナイトパージ制御導入などをお願いして、複数の企業から賛同を得ることができました。
委員会で意識しているのは、省エネ効果をわかりやすく伝えることです。「専有部の照明を制御することで、20~40%の省エネになります」「家庭のドライヤーを1時間使うのと同等の〇〇円の削減が期待できます」など、数値や金額を提示。具体的な省エネのイメージを持っていただくことで、多くの企業に協力をいただいています。

経費節減につながることがわかれば、各企業も積極的に省エネに取り組んでくれそうですね。

もちろんそれもありますが、入居している企業の省エネへの意識がそもそも高いことも、協力をいただける大きな要因だと思っています。「さまざまな環境性能に関する認証を取得しているビルだから」と入居してくださった企業もありますし、専有部内での再生可能エネルギー導入を提案した際も、複数社からすぐに手が挙がったほどです。

総合ファシリティサービス部門 ビルマネジメント担当 担当課長 斉藤 秀成
総合ファシリティサービス部門 ビルマネジメント担当主査 馬場 将志

広大な緑地が生む、 港南エリアの新たなにぎわい

そして、品川シーズンテラスには3.5ヘクタールもの広大な緑地がありますね。

敷地内は800本ほどの樹木で覆われています。東京湾から吹く風を、緑で冷やして都心に送り、ヒートアイランド現象を抑制する役割があります。コミュニティ拠点としても機能しており、ビルにお勤めの皆さまが木陰や水辺で昼食をとったり、夜にパーティーが開催されることもしばしばです。
参加型地域美化プログラム「品川港南エリアピカピカプロジェクト」(略称「品ピカ」)も定期的に開催。入居している企業の皆さまに、コミュニケーションを取りながらゴミ拾いをしていただくことで、きれいな街づくりにつなげています。

地域の方々の憩いの場にもなっているのだとか。

ふだんから多くの地域の方が訪れていますね。ファミリー層が多く、これほどお子さま連れが訪れるオフィスビルは他にないのではないでしょうか。また、エリアマネジメントの一環として、イルミネーションやオープンシアター、焼き芋など各種イベントも開催。数千人を動員した実績もあり、港南エリアのにぎわいづくりのきっかけになっています。

今後の展望を教えてください。

品川シーズンテラスの強みは、ビルの環境性能が高いことに加えて、新しい施策にチャレンジできることです。実際、授乳ボックスの設置や警備ロボットの導入など、訪れる方の利便性・快適性を高める施策が実現しています。今後もテナント企業の皆さまの協力を得ながら、さらなる省エネに取り組んでいきたいと考えています。

品川シーズンテラス株式会社 管理部長 重田 廣行 管理部 業務部門長 運営部門長 初鹿野 充 株式会社NTTファシリティーズ 東日本事業本部 ファシリティソリューション部 総合ファシリティサービス部門 ビルマネジメント担当 担当課長 斉藤 秀成 主査 馬場 将志
品川シーズンテラスの内観

コラム Column

品川シーズンテラスに隠された、周辺環境への配慮とは?

話し手

NTT都市開発株式会社 都市建築デザイン部 建築・エンジニアリング部門 設備担当
担当課長 吉井智彦

夏場の暑さを軽減する「再帰反射形状パネル」と「クールロード」
周辺環境を快適にする「再帰反射形状パネル」

品川シーズンテラスの4階の外壁に設置されているパネルで、太陽の光を地上に落とさず、そのまま太陽の方向に反射させる機能を持っています。このビルは、地下に芝浦水再生センターの施設があるため、駐車場や機械室を4階部分に設けることになりました。そこには窓をつくる必要がないことから、パネル設置のアイデアが生まれました。
日射がガラスに反射してビルの足元へ注ぐと、周囲を歩く人にまぶしさや暑さをもたらします。再帰反射形状パネルはこれを軽減させ、ヒートアイランド現象の抑制にも一定の効果が期待できます。

屋外の舗装にも、利用者の足元を涼やかにするしくみ

芝浦水再生センターの再生水利用の一環である「クールロード」ですね。センターでは、海に流せるほどにきれいにした「処理水」が大量に生み出されます。クールロードは、それをさらに浄化した「再生水」を活用。路盤(舗装材)に浸透させることで、気化熱によって地面の温度を下げて、居心地のいい空間を作ることをめざしました。

本編で紹介した下水熱利用設備をはじめ、さまざまなアイデアを出しながら工夫を重ねてつくったのが品川シーズンテラスです。「NTTアーバンソリューションズのビルで一番の傑作」と言ってくれる社員もいて、携わった者として嬉しく思っています。

太陽光を空に跳ね返す、再帰反射形状パネル
太陽光を空に跳ね返す、再帰反射形状パネル(4階/赤点線部分)
保水性ブロックと再生水で「打ち水」をするクールロード
保水性ブロックと再生水で「打ち水」をするクールロード