Green Futureレポート
大阪城と難波宮跡を一望。
2025年春に誕生する環境に配慮した
ライフスタイルホテル「パティーナ大阪」
大阪城と難波宮跡を一望。
2025年春に誕生する環境に配慮した
ライフスタイルホテル
「パティーナ大阪」
Patina Osaka
NTTアーバンソリューションズグループが手がける、大阪都市部の開発計画。その一環として、大阪城公園の間近に建設しているライフスタイルホテル「パティーナ大阪」が、2025年春に開業します。開発上の大きな特徴は、環境への配慮が設計に組み込まれていること。そこで、基本設計等を担当している株式会社NTTファシリティーズの技術スタッフ3名に話を聞きました。模型や完成予想パース図も交え先取りしてお届けします!
物件概要 Property Description
所在地 | 大阪府大阪市中央区馬場町6番30号(地番) |
規模 | 地上21階/地下3階 |
開業 | 2025年春(予定) |
事業主 | NTT都市開発株式会社 |
基本設計/ 実施設計監修/ 内装実施設計 |
株式会社NTTファシリティーズ |
実施設計・監理/ 施工 |
株式会社竹中工務店 |
概要 | 標準客室は50㎡以上。バルコニー付きの部屋を含む約220の客室のほか、スパ・フィットネスエリア、スカイロビー、レストラン、MICEにも対応したバンケットホールを備える。世界有数のラグジュアリーホテルを手掛けるカペラホテルグループの新しいライフスタイルブランドである「パティーナホテルズ&リゾーツ」は、本計画が日本初進出。 |


インタビュー Interview

話し手
株式会社NTTファシリティーズ
東日本事業本部 都市・建築設計部
建築設計部門 第四設計担当
稲川 大貴
建築設計部門 第四設計担当課長
高橋 清紀
設備設計部門 第一設計担当主査
正田 明誠
大阪城公園と難波宮跡公園に囲まれた立地 遮るものがない唯一無二の眺望
大阪城と難波宮跡公園に囲まれた立地。 遮るものがない唯一無二の眺望
2025年、大阪城を正面に望む「パティーナ大阪」がいよいよオープンしますね!
20階のスカイロビーに立つと、正面に大阪城公園、南側は難波宮跡(なにわのみやあと)公園、西側も史跡保存地区が視界いっぱいに広がります。その眺望の美しさに、つい見入ってしまうでしょう。三方が公園と緑地という自然豊かなオアシスが広がる中で、堂々とした風格を放つパティーナ大阪。周辺の三方は、将来にわたって大きな建物が建たない特別な場所です。梅田、中之島、あべのハルカスなども一望でき、唯一無二の立地特性ではないでしょうか。

由緒ある歴史が息づく場所なのですね。
その通りです。難波宮は飛鳥時代や奈良時代に都としての宮殿があった場所で、大化の改新の舞台にもなりました。大阪城も、豊臣秀吉が築城し、大阪の陣による落城、徳川幕府による再建など、豊臣の栄枯盛衰を目撃した名城として大阪のシンボル的存在となっています。深まる緑と融合し、悠久の歴史の息吹を感じられるこの場所は、いつまでもゲストの心に残る景色となるに違いありません。
ゲストの感動体験を演出する景観を生かすために、設計も配慮されているのだとか。
建物の高さに応じて見えてくる景色が違うので、この立地ならではの魅力を最大限に活かせる設計にいたしました。20階にはスカイロビーやレストランを配置。宿泊するゲストは必ず20階へ上り、大阪城や大阪市内の景色を堪能してから客室へ移動する動線が考えられています。
2階には、国際会議やパーティーなども開催できる400㎡ほどのバンケットホールがあるのですが、周辺の公園等を望めるテラスが張り出し、緑地との一体感がある空間でイベントが行えるようになっています。

大阪城・難波宮跡の自然と溶けあう豊かな緑がゲストを癒やし、快適性を高めます
周囲の環境と調和するような緑の豊かさに恵まれている点も印象的です!
1階南側のガーデンには、四季を感じられ立体的に広がる緑の空間を計画しています。大阪城公園と難波宮跡公園は、大阪市内でもとくに豊かな自然が広がる場所。両公園を調査したうえで、その環境に近い植生となるよう、シラカシ、ケヤキ、桜などを植えています。大阪城公園、ホテルのガーデン、難波宮跡公園の緑が地続きとなるような設計を考え、敷地全体が一体化して、木々や花が訪れる人を包み込む景観を形成するように意識いたしました。
フロントエリアに広がるガーデンは、水都大阪を感じさせる素敵な空間ですね。
1階レストランから外に出られる設えで、ゆっくりガーデンを眺められるようになっています。豊かな水をたたえる池も大きなポイント。南側は交通量の多い高速道路に面しているのですが、緩衝帯の機能を果たすように道路側に沿って盛り土を施し、そこから水を流すことで、せせらぎによって車の騒音を軽減させる効果も期待されています。
また、大阪城公園と難波宮跡公園をつなぐように散策路を整備します。大阪城公園は多くの観光客が訪れる大阪有数の人気スポットとして賑わい、周辺の谷町四丁目は官庁街で繁華街である梅田エリア、難波エリアの中間に位置し交通の便も良い場所です。ホテル利用ゲストだけでなく、地域の方々や観光で訪れる方たちが緑を堪能しながら、周辺の施設へも気軽に行き来できる歩行者ネットワークが整備される予定です。

低層部のテラスにはとくに緑が目立ちますが、これがゲストの快適な滞在に役立ちそうですね。
場所によって違うのですが、奥行き2~3mのひさしがランダムに設置されています。ひさしの上には下垂するツル植物から高さ3mの中木までさまざまな植栽が植えられ、街に緑を表出させる設計としました。大阪城の起伏に富んだお堀や豊かな緑の風景のなかに新たな緑の丘を創出することで、2つの公園の緑が連続し周辺と一体化することを意図しています。
またこれにより、下の階も直射日光を避けられる効果があります。おっしゃるとおり、ゲストに快適に過ごしていただくための工夫です。

ハードルを乗り越え「ZEB Oriented」認証を取得!優れた環境性能に高い評価
パティーナ大阪は、NTT都市開発のホテル開発物件で初となる「ZEB Oriented(ゼブ オリエンテッド)」の認証を受けていますね。これはどんな制度なのですか?
ZEB Oriented認証とは、延床面積10,000㎡以上の建築物のうち、断熱性能の高い外壁やLEDなどの省エネ機器を使ってエネルギー使用量を抑えたうえで、更なる省エネに取り組んでいる建物に与えられるものです。ホテルが認証を受けるためには、「再生可能エネルギーによる創エネを除き、基準値から30%以上を削減」という厳格な基準をクリアしなければなりません。
ZEB Oriented認証の取得はハードルが高く、相当難しいチャレンジだったのではないですか?
もちろん簡単に取得できるものではありませんが、SDGsなど昨今の社会の流れに先駆け、NTTアーバンソリューションズグループは環境負荷低減を目標に掲げ、環境保全や環境エネルギーに配慮した事業に取り組んでまいりました。また、ZEB認証を取得するような省エネに配慮した建物は、壁や窓などの外周部分が高性能なので日射や外気の影響を比較的受けにくく、室内の快適性向上が期待されます。それらを考慮し、今回のプロジェクトでは初期の設計段階からZEB Oriented認証の取得を必達目標としていました。


高い断熱性能のLow-Eガラスを採用 空調の設計も工夫
ZEB Oriented認証を取得するために、配慮された点を教えてください。
代表的なのは、ホテル客室部分の四方の壁全面にLow-E複層ガラスを採用したことです。このガラスは高い断熱性能が特徴で、複層タイプにすることで、より性能を高めています。快適性の向上に加え、空調負荷も軽減されて省エネルギーにつながりますし、ガラスに空の青さが溶け込んでさわやかな印象を演出し、大阪城の背景になるような役割を果たします。
客室の窓の近くは気温や日射の影響を受けやすいので、窓の下に空調設備を設置することも多いのですが、外の景色がその分遮られてしまいます。代わりに断熱性能の高いLow-E複層ガラスを採用して足元まで大きなガラス窓とすることで、ゲストに窓枠いっぱいに広がる景色を楽しんでいただけるようにいたしました。
とても性能の高いガラスを採用されているのですね!特殊なガラスだからこそ、苦労されたことは?
Low-E複層ガラスの機能や透明度を見極めて最適なものを選ぶことに苦労しました。例えば、Low-Eガラスは反射率が高く紫外線防止効果がある反面、夜景も反射して見えづらくなることがあります。ゲストがせっかくの夜景を楽しめなくなるので、断熱性能を担保しつつ反射率の低いものを選ぶ必要がありました。夜景が反射せずに楽しめるように、Low-Eガラスのサンプルを何種類も作成して検討しました。
それだけではありません。2.8mと高い天井を確保するため、空調設備は天井ではなく壁から横に吹く設計にして、窓までまっすぐ到達させる仕組みを考えました。一般的に夏は24〜28℃、冬は20〜24℃程度が快適な温度とされており、その範囲を外れて不快域にならないように、気流シミュレーションを繰り返して調整。快適な環境が保てるように、Low-Eガラスの種類、空調吹出口のサイズ・形状、配置など、最適な計画を検討した経緯があります。


机上で設計するだけでなく、実際に滞在するゲストの目線でさまざまなサンプルの確認やシミュレーションを繰り返したのですね!設計上で、省エネルギーに配慮された点についても教えてください。
お湯を作るためのボイラーや客室の冷暖房、換気をする空調設備、給水用の水槽などが入る機械室、電気を送るための電気室などの配置も工夫しています。
ホテルの高層にはスカイロビーやレストラン、中層には客室、低層にはバンケットホールやプールなどがあり、それぞれで水や電気の消費量も違います。そのため、機械室や電気室を1か所のフロアに集中させるのではなく、高層・中層・低層階の3か所に分散。1か所だと、すべての階に電気や水などを万遍なく送る際に非常に大きなエネルギーが必要ですが、3か所なら各層ごとに調整することができます。これにより、少ないエネルギーで効率よくスムーズに供給できるのです。
排熱も余すところなく利用する省エネシステムを導入
特徴的な省エネルギー設備がいくつも導入されているそうですね。
いくつかご紹介します。まずは、コージェネレーションシステム(CGS)です。これは、発電装置を使って電気を作るときに発生する排熱を捨てずに回収して、有効に使うシステム。排熱は、冷暖房や給湯設備に利用されます。
ホテルは、電気や熱を使う時間帯に偏りがあります。最も少ない時間帯のエネルギー使用量に相当する、必要最小限となるCGSを計画しました。このCGSを1日中運転させることでホテル全体のベースとなるエネルギー供給を担い、熱と電気をフルで使う計画に。ピーク時などは別の設備と組み合わせていますが、ベースの発電は効率の良いCGSでまかなうという考え方です。
また、ヒートポンプチラーも採用しています。チラーとは、英語の「chill(冷やす)」が元となった言葉で、ヒートポンプチラーは空調用の冷温水を作るシステムのこと。電気式とガス式の両方を採用しているのがポイントです。電気式とガス式では冷温水を作る効率がそれぞれ違い、どちらを使用するか選択できることが大きなメリット。夏や冬などはどちらも稼働することになりますが、春や秋といった空調負荷が小さくなる時期は、消費エネルギーが少ない方を優先して使うことができます。また、グリーン電力やカーボンニュートラルガスといった環境に優しい電気やガスを採用するとCO2排出量が実質ゼロとなるので、それらを優先して使用することも考えています。



そのほか、潜熱回収温水器という高効率のボイラーも特徴的です。潜熱回収温水器は従来のボイラーでは捨てていた、燃焼ガス中の水蒸気に含まれる"潜熱"という未利用エネルギーを回収して利用するシステム。一般的に、家庭用のガス給湯器は高効率といわれるエコジョーズでも熱効率が約95%といわれています。一方、潜熱回収温水器は、熱効率が約105~110%となり、より少ないエネルギーでお湯を作ることができます。これにより、燃料費とCO2排出の削減ができるメリットがあります。
人にも環境にも優しい唯一無二のホテルで、ここでしか味わえない豊かな時間を
設備はもちろんのこと、建物のいたるところに省エネルギーのための工夫が詰まっているのだとか。
全館LEDの採用、照明設備への人感センサーやタイマー制御、空調設備へのインバーター制御、節水器具の採用、エレベーター回生電力利用など、細部まで配慮を欠かさず、トータルで大幅な省エネ効果を生み出しています。それら一つひとつを積み上げていった結果、30%以上の一次エネルギー消費量削減を達成し、ZEB Oriented認証を取得できたのです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
パティーナ大阪は、歴史的遺産や周辺の景観、省エネ、脱炭素といった多様な環境への配慮がなされたホテルです。ぜひこのホテルで歴史に触れ、周辺環境を楽しむと同時に、ここでしか味わえない心豊かなひとときを満喫してください。そして滞在しながら、環境についてもみつめる時間を持っていただけたらうれしく思います。


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