Green Futureレポート
NTTファシリティーズ 環境ワークショップ
1日目
環境に関する気づきを得る
清泉寮での2日間
NTTファシリティーズとしてはじめての試みであるこの環境ワークショップは、環境への意識の醸成、および関心を高めることを目的としたもの。NTTファシリティーズは、2024年に「サステナブルな未来の実現」に貢献する企業となりたいという想いを込め、自社のパーパス『Our Purpose』を策定しました。そのスローガンである「ファシリティを輝かせ、安心とときめきに満ちたサステナブルな未来を共創する」に沿って、この環境ワークショップで得た気づきやアイデアが活かされていくことが期待されます。
標高約1,400メートルの高原に広がる約240ヘクタールの清泉寮(せいせんりょう)の敷地には、写真の本館およびレストランのほか、コテージやロッジなど、フィールドに隣接したさまざまな宿泊・研修施設が充実しています。
ワークショップの場となったのは、八ヶ岳の南麓、山梨県北杜市高根町清里にある、公益財団法人キープ協会により運営されている宿泊研修施設「清泉寮(せいせんりょう)」。「清里の父」と呼ばれている米国人のポール・ラッシュ博士によって1938年に設立されたキープ協会は、1983年から環境教育事業を開始し、清里の自然を活かし、対象や目的に応じてユニークで多彩なプログラムを開発・提供しています。
清泉寮に到着した一行は、まずは本館ホールでオリエンテーション。主催側スタッフから説明があり、今回のワークショップの目的や、これまでのNTTアーバンソリューションズグループおよびNTTファシリティーズの環境への取組みを再確認。
続いてキープ協会の鳥屋尾健(とやお・たけし)さんから、清泉寮の施設や今回のワークショップのスケジュールやテーマなどを紹介していただきました。
参加者は全国から来ており、入社年もさまざまなため、ほとんどが初対面。そこで好きな季節ごとに4~5人ずつのグループにわかれ、輪になって自己紹介。
森の木々からエネルギーや
炭素の循環を体感
今回のワークショップのキーテーマは、脱炭素と生物多様性。1日目は主に脱炭素に関して、専門の知識と経験を備えたレンジャー(自然解説員)のガイドのもと、間伐作業をはじめ、さまざまな体験をします。森の木々は、太陽からの光のエネルギーを利用して、CO2と水を原料に生体の素材となる有機物質を作り、酸素を放出します(光合成)。こうして自らのカラダの中にCO2を貯めてくれています(炭素固定)。また落ちた枝や葉は微生物に分解されて土壌の材料になります。森に入って木を観察したり、触れたりすることで、そうしたエネルギーの流れ、循環を感じることができます。
キープ協会の村井孝一さん(左)と鳥屋尾健(とやお・たけし)さん。共にレンジャー歴20年以上のベテランです。
間伐作業に使う道具をピックアップするために「八ヶ岳自然ふれあいセンター」へ。施設の近くに生えているモミの木の葉をちぎって指の間でもみ、香りをかいでみます。
やすらぎを感じさせてくれるモミの香り。モミにはリラックス効果があるフィトンチッドという物質が豊富に含まれています。
ヘルメットやノコギリ、枝切りバサミなどを携えて森へ。途中の牧草地で鹿の糞を発見。
「カラマツ林の小径」と呼ばれるエリアに到着した一行は、人と自然が共生するために必要な間伐作業を学びます。森の植物は、太陽のエネルギーを何とかして受け取りたいので、光を浴びるために上に伸びていきます。また既存の樹木を利用して高い所へ伸びていく、ヤマブドウのような蔓植物もあります。そうした姿形からはエネルギーの流れを感じることができます。
カラマツのほか、アカマツ、リョウブ、ミズナラなどが生育しているカラマツ林の小径。二手にわかれて森に入っていきます。
作業の前に、森を観察。落ちている枝を拾って地面を掘ってみます。「黒い土は、落ち葉などの有機物由来のものです」と鳥屋尾さん。
森の木は、伸び放題にしておくと、鬱蒼として光が差し込まない、暗い森になってしまいます。また枯れて朽ちたり折れたりした枝があると、人が入りづらくなって、ますます森は荒れていきます。そこで不要な木や枝を間引いてあげる必要があります。
「これは切ってよい枝ですか?」とレンジャーさんに確認しながら、慣れない間伐作業を進めていきます。
切った枝は、集めて積んでおくことで、野ネズミなどの小さな隙間を好む小動物のちょうどよい隠れ家になります。
作業後、戻る途中でヤマネの巣を発見。「これはテング巣病という病気にかかり枝が密集していますが、ヤマネはこのような場所や、木のうろなどの小さな空間に苔を敷いて巣にします」と村井さんが説明してくれました。
間伐作業後は、火起こし&炭作りに挑戦。燃やすことで、木のエネルギーは火に変わり、暖を取ったり、調理するために活用できます。また木の中に固定されていた炭素は大気に解放され、また若い木々に吸収されていきます。また後に残った炭は、炭素を抱えたまま長い間その姿を保つことができます。
火起こしにはファイヤースターターを使います。ほぐした麻紐に火花を飛ばして火種を作るところまではできても、すぐに消えてしまいなかなか火を育てられません。
試行錯誤の末、何とか火起こしに成功!
あらかじめ拾っておいた木の枝や落ち葉、木の実などを缶に入れ、火にかけて30分ほど燻します。四隅から出てくる煙が止まったら炭の完成です。
最後まで余すところなく
利用できる木のエネルギー
森から戻った一行は、清泉寮の新館へ。2009年に竣工した新館では、暖房や給湯に木質ペレットボイラーを使用しています。燃料のペレットは、山梨市の製材所で、木製パレットなどの製造工程で排出される木くずや端材を使って作られています。ペレットを燃やすことでCO2が発生しますが、木を利用し、新たな木を植え、育てるという流れが循環することで二酸化炭素を増やさず、またその分の化石燃料使用を抑えます。木材自体も山梨県内産のものなので、輸送時も含めたガソリンなどの使用削減を実現しています。また従来は産業廃棄物として捨てるしかなかったものに使い途が生まれ、1本の材木の価値が付加されたことは、木材を利用し、育てる林業の循環を促す効果も期待できます。
ペレットボイラーで加温された水は、このストレージタンク内で上水と熱交換します。タンク内の温度は60度に設定されています。
長さ1~3センチ、直径6.5ミリのペレット。接着剤を使わずに円筒型に圧縮成形しただけなので、成分は100%天然木です。
清泉寮新館では年間約287トンのペレットを消費していますが、これによって削減できる排出CO2は年間約300トンになるそうです。日ごろの業務に近い設備関連の内容だけに、参加者からは「ペレット購入にかかる費用はいくらですか?」「ボイラーの導入コストは?」など、具体的な質問が飛んでいました。
本館ホールに戻ってきた一行は、1日の気づきのまとめを行います。4〜5人ずつ4つのグループにわかれた後、各自ワークシートへこの日の体験で感じたことを書いていくと、A4サイズの用紙があっという間に埋まっていきます。その後グループごとにホワイトボード上に内容をまとめ、全員の前で発表しました。そして夕食の後は、ナイトハイクに出発です。希望者のみ参加のオプションのプログラムですが、ほぼ全員が参加。昼に間伐作業を行ったカラマツ林の小径付近の森まで歩いたら、それぞれ地面にシートを敷き、その上に寝転がってみます。ライトを消して闇の中に身を置くと、五感が刺激され、木々の間を抜ける風の音、遠くに感じる動物たちの気配、土の匂いなどが感じられます。
まとめでは、「木を切ることはいけないことだと思っていたが、森も人間と同じで手入れが必要で、手を入れることで循環させることができることを知った」「ペレットボイラーを見学したことで、地産地消、代替エネルギーについて引き続き学んでいきたい」といった意見が発表されました。
まとめの後、完成した炭のお披露目。枝や実が、姿を保ったままきれいに炭になっていました。
必要最低限の灯りでナイトハイクへ。赤色のライトを使っているのは、赤は動物に認識されにくいため、驚かす恐れが少ないからだそうです。
2日目
生き物の目線で森を見て、
生物多様性について考える
この日のテーマは「生物多様性を考える」。森の木々が貯めたエネルギーは、森に暮らすさまざまな生き物によって、さまざまな形で利用され、循環しています。森の中を歩き、そうした生き物たちの目線で森を見ることで、森が生き物たちにとっていかに役立っているか、また多様な生き物が暮らしていることは森にとっても重要なことが実感できます。
全員で「清泉寮やまねミュージアム」へ。有志の手によって建てられた旧ネイチャーセンターを1998年から日本の天然記念物ニホンヤマネをテーマに運用を開始した世界唯一の博物館。館内では、実物大のぬいぐるみなどを手に取って楽しめる展示で、ヤマネの生態や、ヤマネにとって必要な自然環境などを紹介しています。
ミュージアムの奥に広がる森に入り、「五感を開くガイドウォ―ク」を実施。立ったりしゃがんだり、いろいろな目線で森を観察します。さらに鏡を目の下にあてがい、鏡像ごしに見ることで、上下反転した世界を体感。フクロウなどの天敵に見つからないように、木の枝の下側をぶらさがるように移動しているヤマネの目線になってみました。
ガイドウォークの後は、1日目と同じように、森を守るためのレンジャーの仕事を体験。「富士山とせせらぎの小径」と呼ばれるエリアで自然歩道にウッドチップをまきます。チップを敷くことで木の根を直接踏まなくなるため、木へのダメージを低減できます。また土が踏み固められにくくなるので、モグラなど土の中で生活する生き物も暮らしやすくなります。人にとってもチップがクッションになって、気持ちよく歩けるというメリットがあります。
八ヶ岳自然ふれあいセンターまで戻り、施設横に積まれているウッドチップを手押し車に移します。
手押し車を押して富士山とせせらぎの小径へ。
深さ10〜20センチになるようにウッドチップをまいていきます。運搬も含めるとかなりの重労働です。
作業後は、道路の上空に、道をまたいで設置されている、小動物のための歩道橋「アニマルパスウェイ」を見学。ヤマネやリスといった樹上で暮らす小動物の行動範囲は広いため、道路によって森が分断されると、エサが足りなくなったり、道路を横断しようとしてクルマにひかれてしまう「ロードキル」などの問題が生じます。そこで、関係者が集まりアニマルパスウェイの共同研究が開始され、2007年および2010年に山梨県北杜市内の八ヶ岳南麓に2機のアニマルパスウェイが設置されました。
清泉寮近くにはアニマルパスウェイの1号機が設置されていて、歩いて見学に行くことができます。
アニマルパスウェイは一辺25cmのトラス構造を採用し、廉価かつ丈夫なつくり。両端に設置されたモニタリングカメラによって、ヤマネやヒメネズミの利用が確認されています。
昼食を挟んで、キープ協会の公益事業として運営されている認定こども園「清里聖ヨハネ保育園」へ。この保育園では、清里高原の豊かな自然環境を積極的に保育に取り入れています。リアルな自然の中で自然について学ぶ教育の場を見学させていただき、環境教育について理解を深めました。
森の地形を活かして建てられた木造の園舎は、敷地内で伐採された森の木をはじめ、地元の木材が用いられているそうです。
保育園からはいつでも気軽に森や野原へでかけることができます。小川での水遊びや、野の草花遊び、木登りから焚き火まで、子どもたちはさまざまな経験を通じて自然について学びます。
参加者の中で深まった
環境への意識
本館に戻った後は、2日間の気づきのまとめ。最後の発表では「人間の努力次第で動植物と共存していけることがわかった」「自身の業務の中で環境のためにできることはないかを考えたい」「お客さまへ建築が環境へ与える影響を説明できるようになりたい」「環境に適した設計だけでなく、環境を活かした設計で地域の人に貢献したい」「森や動植物の立場に立つことができた、いろいろな見え方があり、さまざまな目線で思いやりを持つことが大事だと思った」「普段の業務でも環境負荷への配慮をあたりまえにしていきたい」といった意見が次々とあがり、参加者の中に確実に環境への意識が深まった実感がありました。
1日目の終わりと同様に、ワークシートに記入した後、グループごとに内容をまとめて発表していきます。
主催側の中村課長からの締めの言葉でワークショップは終了。「環境に対する気づきはすごく大事なことですが、日常の業務に戻るとどうしても利益や経済性重視になりがち。そこをあきらめずに、ファイヤースターターでの火起こしのように根気強く取組んでもらえたらと思います」
参加者の中から、3人の方に2日間の環境ワークショップで感じたことを語ってもらいました。
今回のワークショップでは、環境に関する気づきのほかに「これまで交流の機会がなかった社員と一緒に体験し、意見を交換できたことがよかった」といった感想も多く聞かれました。ワークショップを通じて得た知見や社員間の絆を活かし、豊かで持続可能な未来の実現に取組んでいきます。