「道庁南エリア」が取り組む未来像の実現とは
憩いの場を創る
NTTアーバンソリューションズグループは、街に、社会に、さまざまな価値を提供することにより、地域社会の課題解決に取り組んでいます。本シリーズでは、その取り組みを具体的にご紹介。
今回は座談会前編に引き続き、道庁南エリア研究会が取り組む社会実験の内容や、その成果をどう活かしていくか、さらに他拠点でのエリアマネジメントの展開についてもお話しいただきました。
団体概要
団体名:道庁南エリア研究会札幌の赤れんが庁舎南側エリアにおいて、地権者有志が集まり、新たなにぎわい創出に取り組むまちづくり団体。2021 年10 月から活動を開始し、2022年3月にはエリアがめざす 将来像として「GREEN&SMART 道庁南」を掲げた「まちづくりビジョン」を策定。社会実験等を通して『新しい働き方・楽しみ方を実現できるまち』をめざして活動中。
このエリアに生まれるかもしれない「可能性」を探る社会実験
3回目となる2024年の社会実験ではどのような反響や感想が寄せられましたか。
諸藤:今回は特に地下スペースの反響の大きさが印象的でした。当日はスペースの利用者やイベント来場者にアンケートを実施したのですが、ご回答いただいた98%の方から「地下歩行空間が変わってほしい」という声が上がりました。この結果には衝撃を受けました。地域の皆さんが日常的にぼんやりと感じていた共通認識が、今回の試みによって、一つのカタチとなって可視化されて出てきたご意見だと感じています。
野上:札幌市役所の多くの職員からも今回の社会実験に好意的な言葉をもらいました。やはり地下スペースにおける取り組みはインパクトがあったようで、「この社会実験イベントを3日間でやめるのはもったいない」という声も聞かれました。その他の関係各所からも「とても良かった」との声が上がっています。
アンケートを実施した結果、98%の方が「地下歩行空間が変わってほしい」と回答(n=127)
内川:昨年度から社会実験の企画を担当していますが、今年は「少し手を伸ばして、ひと工夫をするだけで居心地の良さが体感できること」を大切にしました。例えば、地下スペースの中を「植栽・音楽・香り等の上質な空間演出」「椅子机の設置のみ」「通常時のまま」の3つの空間に分けて利用の違いを検証しましたが、植栽や椅子を置くといったひと工夫をするだけで、落ち着いた時間を過ごせる空間になったと思います。また、今回はキッチンカーの出店者とイベント講師が古くからのお知り合いだったことがわかり、盛り上がりました。アンケート等の目に見える形ではないことですが、こうした偶然のできごとに、この場所の吸引力のようなものを感じました。
地権者や事業者に向け、可視化しながらベネフィットを伝える
社会実験での反響や成果を、今後どのように反映させていきますか。
諸藤:今回はシンボルストリートに総延長300mを超えるアート装飾を施しました。300mにも及んで都市空間を変えることができたという視覚体験を契機に、 今後の景観の統一やルール作りに発展させられればと考えています。
また、研究会では社会実験の成果を踏まえてガイドライン策定のミーティングを重ねています。このまちづくりガイドラインを通して、事業者と行政の動きが一体となることで、さらに上位の都市計画まで進めていきたいですね。
野上:道庁南エリアの動きは、札幌市で現在検討中の(仮称)第3次都心まちづくり計画の検討会の中でも、新たなまちづくりの動きがあるエリアとして注目されており、私自身もそう認識しています。今回の社会実験では、人と人とのコミュニケーションが生まれる様子を現場で見ることができました。人のつながりは、まちづくりにとってもっとも大切なこと。社会実験は、その動きを見せるという意味で重要な取り組みだと改めて認識しました。
今後皆さんが担っていく役割、これからめざすことについてお聞かせください。
原:大成建設本社のある東京・西新宿でもまちづくりに参加しているので、その経験も道庁南エリアに活かしていきたいです。繰り返しますが、このエリアはビジョンだけに留まらない、社会実験によって「試してみる」という取り組みが特長です。計画と実践を繰り返していくことで、自然にメンバーの皆さんの思いが揃ってくる。その話し合いから有意義なガイドラインが生まれてくると思います。
永田:事務局として、北海道支店として、現地で地権者さんたちとコミュニケーションを図り、よい関係性を維持構築していきます。隔月の研究会をコンスタントに重ねるなかで、日頃の会話の中からご意見や思いを受け止め、皆さんと一緒にまちづくりをしていきたいと思っています。
内川:エリア的には隣接の地区を担当していますが、両地区に共通する部分は多いと感じています。まちづくりは、描いた未来像を実現していく"バックキャスティング"。十数年後の姿をどう構築していくのか。そのためにも今度は皆さんとどんどん話したいですね。些細な雑談の中から生まれる大切なことも、たくさんあると思います。
伊藤:札幌都心における複数のエリアでのまちづくりで得た経験をもとに、道庁南エリアに対して、ある意味で俯瞰した視点も持ちながら関わっていきたいです。現在検討中のガイドラインの策定については皆さんとの対話を深めていくことがカギになると思います。
野上:私は伴走支援という立場で、研究会の「思い」を実現するためのサポートをしていきたいです。また私は、札幌都心のウォーカブル施策を推進していくという役割もあります。今後の都心のまちづくりにおいてウォーカブルの推進は柱の一つと考えていますが、道庁南エリアはウォーカブルストリートとしてポテンシャルが特に高いと思います。引き続き連携しながら、道庁南エリアの「まちづくりビジョン」の実現をめざしていきたいと考えています。
諸藤:短期的には 、地域の皆さんにお見せするパース(イラスト)を作成し、ビジョンのイメージを共有したいと思います。ここでの取り組みは地域に支えられているという実感があります。道庁南エリアで得た成果を、ロールモデルとして全国にも波及させていきたいです。
NTTアーバンソリューションズの展開についてもお聞かせください。
諸藤:当社のエリアマネジメント推進として、道庁南エリアを軸としつつ、名古屋の東桜(ひがしさくら)でも同様のエリアマネジメント協議会を立ち上げて活動を開始しています。また広島では、公園の中に同様の協議会を立ち上げ、公園を起点としたエリアの回遊性やモビリティの導入などを展開しているところです。
こうした地方での先行展開のノウハウも活かしつつ、東京都心の日比谷エリアおよび品川港南エリアにおいてもエリアマネジメントを進めています。
エリアマネジメントは、視点の転換や新しい発想で小さい都市空間を変化させて、そこから地域の方々の共感を得ながら大きな変化を促していけるところが醍醐味です。現存する建物やインフラを活かしながらエリアを活性化し、経済性、価値を向上させるという取り組みは、時代の要請でもあると思います。当社ではそこにデジタル技術を付加することで、かつてない新しい価値を創造していくことを追求していきます。