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道庁南エリア ~前編~ 
社会実験を通してまちの将来像を可視化する!~前編~
「道庁南エリア」が取り組む未来像の実現とは
社会実験を通してまちの将来像を可視化する!~前編~
道庁南エリア
賑わいと
憩いの場を創る

NTTアーバンソリューションズグループは、まちに、社会に、さまざまな価値を提供することにより、地域社会の課題解決に取り組んでいます。本シリーズでは、その取り組みを具体的にご紹介。
今回取り上げるのは、北海道庁旧本庁舎(以下「赤れんが庁舎」)南側エリアでのまちづくりプロジェクト。ユニークな社会実験を通してまちの未来像を可視化しながら、ストリートのにぎわいを創出します。地権者有志からなる「道庁南エリア研究会」の6名による座談会を、前編・後編の2回に渡ってお届けします。

団体概要

団体名:道庁南エリア研究会札幌の赤れんが庁舎南側エリアにおいて、地権者有志が集まり、新たなにぎわい創出に取り組むまちづくり団体。2021 年10 月から活動を開始し、2022年3月にはエリアがめざす 将来像として「GREEN&SMART 道庁南」を掲げた「まちづくりビジョン」を策定。社会実験等を通して『新しい働き方・楽しみ方を実現できるまち』をめざして活動中。

座談会へ参加いただいた方(道庁南エリア研究会)

諸藤弘之
NTTアーバンソリューションズ株式会社諸藤弘之

事務局:全国でのまちづくりの経験を踏まえて、道庁南エリアならではの価値を創造し、研究会を牽引している。

永田裕也
NTT都市開発株式会社永田裕也

事務局:北海道支店において研究会と地権者の窓口として、事務局メンバーの中心的役割を担う。

原拓也
大成建設株式会社原拓也

事務局:東京西新宿でのエリアマネジメント経験等を生かした実践的なまちづくり活動の提案をしている。

野上徹
札幌市まちづくり政策局野上徹

構成員:行政という立場から札幌都心のまちづくりを見渡しつつ、研究会の活動をサポートしている。

内川亜紀
札幌駅前通まちづくり株式会社内川亜紀

協力団体:道庁南エリアに隣接する地区のエリアマネジメントを担い、周辺エリア開発の経験を軸にしながら、まちの将来像をともに考えながら社会実験を企画している。

伊藤涼祐
株式会社ノーザンクロス伊藤涼祐

協力団体:札幌都心のまちづくりの経験を生かし、道庁南エリアのまちの将来像を地権者と共に考えガイドライン策定を手掛ける。

地域の資源が詰まっているのに活かされていない!?

道庁南エリア研究会対象範囲 道庁南エリア研究会対象範囲 ※一部現況と異なる部分がございます

「道庁南エリア研究会」が発足した経緯を教えてください。

諸藤:近年、北海道新幹線の延伸計画や札幌駅周辺の開発計画を契機に、札幌市の各エリアで「まちが変化していく」というムードが高まっていましたが、この道庁南エリアはあまり大きな変化がなく従来の「静かなビジネス街」のイメージのままでした。赤レンガ庁舎や歴史的建造物である北菓楼札幌本館、大通公園へと続く豊かな緑など、魅力ある地域資源が詰まっているにもかかわらず、活気が少ない。周辺の札幌駅前やススキノ方面などの賑わいと比較すると、相対的に"地盤沈下"している印象もありました。

原:札幌市のまちづくりの方針を示す行政計画「札幌市第2次都心まちづくり計画」に照らし合わせても、賑わいや交流などの展開が示されない、ぽっかり空いた空白地帯となっていましたね。ここをどう魅力的にしていくか、どのような色塗りをしていくか。「こんなエリアにしたい」ということを自ら考えていかなければならないという危機感が、研究会発足の原動力だったと思います。このエリアに都市の新しい回遊動線をつくることで、周辺への波及効果も期待できると感じていました。

永田:まずはNTTアーバンソリューソンズ、NTT都市開発、大成建設の3社で勉強会を重ねました。そして周辺の地権者に少しずつ声をかけて、今のメンバーが集結。3社が事務局となり、2021年『道庁南エリア研究会』として発足しました。

道庁南エリア研究会対象範囲
道庁南エリア研究会対象範囲

「GREEN&SMART 道庁南」を掲げた「まちづくりビジョン」

道庁南エリア研究会対象範囲 道庁南エリア研究会がエリアのあるべき姿としてまとめたビジョン『GREEN&SMART 道庁南』

道庁南エリアの「まちづくりビジョン」とはどういうものですか?

諸藤:そもそも「まちづくりビジョン」とは、まちの将来がどのような姿であってほしいかを、そのまちの関係者で創り上げる理想像のことをいいます。私たちが設立後の2022年3月に策定したのが『GREEN&SMART 道庁南』というビジョン。「Walkable District」「Business in the Green」「Smart Old & New」の3本柱で構成されています。

めざすのは、居心地がよく刺激があり、歩きたくなるストリート。みどりの中で働く、札幌らしいライフ・ワークスタイルの実現。そして、北海道の歴史を継承しつつスタートアップが集まり、発信するまち。なかでも当社は、歴史価値のある地域に対して付加価値を高める役割を担います。

永田:具体的な施策として、道庁南門通りのシンボルストリート化があります。このエリアに新しい"都市軸"を作ることで、札幌の都市の中に新しい回遊動線を作っていこう、ということが大きな柱です。

伊藤:私は札幌都心における幾つかの地区でまちづくりや、都市計画・ガイドラインの策定に関わっている立場で、このプロジェクトに参加しています。これまで札幌都心ではまちづくり計画で示された骨格的なエリアでまちづくりが進展してきており、それが今ちょうど更新期に差し掛かった時期にあります。そのような状況の中で、道庁南エリアが先行する地区にどのように追いついていけばいいか、それが課題でもありました。エリアマネジメントの進め方としては、一方向に決めて一度に大きな取り組みをするのではなく、社会情勢なども鑑みて、小さいサイクルでトライしながらフレキシブルに進めていくスタイルを提案しています。

内川:当社は道庁南エリアに隣接し、「チ・カ・ホ」や「アカプラ」がある札幌駅前通地区のエリアマネジメントを手掛け、まちづくりビジョンを作り上げてきました。その成果を道庁南エリアでも応用すべく、2023年からこの研究会の社会実験に携わっています。このエリアの面白さは、「社会実験」を重ねながらビジョンを実現しているところにあるのではないでしょうか。既存のまち、ストリートに、少し工夫した何かをプラスすることで、まちの居心地の良さが格段に良くなると感じることができます。

道庁南エリア研究会対象範囲
研究会会員でまちの将来像を議論
道庁南エリア研究会対象範囲
低未利用となった空間を転用してイベント空間として利用

<コラム>未来のまちを思い描く「ドゥ・イット・ユア・ストリート」

2024年10月に行われた、3回目となる社会実験。道庁南エリアの地上・地下の道路空間や民有地に、仕事やリフレッシュができる空間と、大通公園から赤れんが庁舎の通りを彩るシンボルストリートを創出した。このエリアに生まれるかもしれない「可能性」を探る社会実験としてイベント的に開催。好評を博した。

<コラム>未来のまちを思い描く「ドゥ・イット・ユア・ストリート」
<コラム>未来のまちを思い描く「ドゥ・イット・ユア・ストリート」

地下スペース:
ワーク&リラックスエリアとして、ふだん何気なく通り過ぎている場所に「お仕事・休憩スペース」を設置。デスク&チェアの周辺にグリーンを配置し、環境音楽や香りの演出も行われた。「オフィスの外」の可能性を発見する試み。

<コラム>未来のまちを思い描く「ドゥ・イット・ユア・ストリート」
<コラム>未来のまちを思い描く「ドゥ・イット・ユア・ストリート」

キッチンカー:
ランチタイムや仕事終わりに気軽に利用できる「おいしいご飯」。水素燃料電池車「MIRAI」から作られたエネルギーを利用するキッチンカーも登場し、カーボンニュートラルにも貢献。

<コラム>未来のまちを思い描く「ドゥ・イット・ユア・ストリート」
<コラム>未来のまちを思い描く「ドゥ・イット・ユア・ストリート」

ストリートの幕アート:
艶やかなえんじ色と鮮やかな緑の2色をシンボルカラーにした幕アートを総延長約300mに渡って展開。地域の人のまちのコメントを読みながら歩くのが楽しい。

<コラム>未来のまちを思い描く「ドゥ・イット・ユア・ストリート」
<コラム>未来のまちを思い描く「ドゥ・イット・ユア・ストリート」

ヨガ体験:
リフレッシュ&ウエルネスエリアとして、ヨガ講座やラジオ体操などを実施。15分の休憩時間で空を見上げながら伸びをしてリフレッシュ。

社会実験で、ビジョンを目に見える「カタチ」にしていく

社会実験の目的について教えてください。

原:そもそも社会実験とは、地域におけるにぎわいの創出やまちづくりを目的として、期間を限定して試行し、その効果や問題点を明らかにすることです。私たちには「道庁南門通りをシンボルストリートにつくりあげよう」というビジョンがありましたが、遠い将来の理想的なビジョンを訴えるだけでは地域の方々もイメージしづらいと思います。そこで「そのシンボルストリートはどんなカタチなのだろう?」というところを現実の都市空間の中で小さく形づくることを模索しつつ、2022年から社会実験にトライしてきました。

永田:第1回目の社会実験では、アーバンネット札幌ビル敷地の屋外空間にこたつを設置した「おそとワーク」がインパクトを与え、第2回目は初めて車道の一部を占有させていただき滞留空間をつくりました。また「パーティーバイク」という9人乗りの特殊な自転車が大変好評でした。研究会のエリアが広いので、回遊性向上を意図して導入しましたが、結果として北海道初の走行となりました。第3回目となる今年は、周辺の事業者の皆さんからも「キッチンカーが楽しみ」などの声が聞かれ、地域のイベントとして定着してきた感があります。

伊藤:歩道から見える場所にこたつを並べる企画は、やはりインパクトがあったようで、「こたつのイベントやっていた場所ね」と声をかけていただいています。社会実験がこのエリアを周知する力になっている。3回の社会実験で着実に道庁南エリアの認知度は向上したと思います。

屋外空間にこたつを設置した「おそとワーク」
屋外空間にこたつを設置した「おそとワーク」
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