商業施設の枠を超えて街に価値を届ける『新風館』 商業施設の枠を超えて街に価値を届ける『新風館』 新風館
憩いの場を創る
NTTアーバンソリューションズグループは、街に、社会に、さまざまな価値を提供することにより、地域社会の課題解決に取り組んでいます。本シリーズでは、その取り組みを具体的にご紹介。
今回取り上げるのは、京都の烏丸御池駅直結の商業施設『新風館』です。その歴史やコンセプト、そして大盛況だった同志社大学の交響楽団とのコラボレーションの背景などに迫ります。
物件概要
物件名:新風館
京都市中京区、烏丸御池駅直結の商業施設。大正15年に建てられた『旧京都中央電話局』を再開発して生まれた。建物の歴史的な外観は残しつつ、隈研吾氏の監修でモダンなデザインを取り入れ、伝統と革新が融合したスタイルを築き上げている。ファッション&ライフスタイルブランドや飲食店のほか、ミニシアターも展開。シアトル発のライフスタイルホテル「エースホテル」がアジア初進出の場として選んだことでも注目されている。
趣が感じられる外観
アートもあり四季の感じられる中庭
インタビュー
お話を伺った方
同志社交響楽団
23年度幹事長
杉本 晴菜
23年度広報長
笠原 祥香
NTTアーバンバリューサポート株式会社
新風館 館長
宇佐川 昭
大正15年竣工の旧電話局を再開発。
「伝統と革新」がコンセプトの商業施設
新風館の歴史について教えてください。
館長:新風館の前身は、大正15年(1926年)に完成した『旧京都中央電話局』です。1983年に京都市指定・登録文化財一号に登録された、歴史的価値の高い建物です。そんな貴重な旧電話局の外観を残しつつ再開発を行い、2001年に完成したのが『新風館』。「京都に新しい風を吹かせたい」という想いから名付けられました。
その後、再度のリニューアルに向けて、2016年に一時閉館。隈研吾氏をデザイン監修に迎え、4年の月日をかけて2度目の再開発を行い、ホテル・店舗・映画館からなる複合施設として2020年に再開業しました。
新風館のコンセプトについてお聞かせください。
館長:コンセプトは、2001年の完成時から変わらず「伝統と革新」です。京都には、伝統を重んじながらも新しいものを柔軟に取り入れていく文化があります。そんな京都らしいスタイルをコンセプトに反映しました。大正時代に生まれた建物を守りつつ、隈研吾氏によるモダンなデザインを取り入れているところにも、コンセプトを感じてもらえるのではないかと思います。
近年はネットショッピングが隆盛していますし、買い物だけが目的なら、正直なところ近隣の四条エリアのほうが便利です。もし新風館がどこにでもある商業施設として存在するのであれば、その価値はさほど高くないように思います。でも、コンセプトである「伝統と革新」を感じられる、新風館にしかないスタイルを大切にすることで、観光客や地域の方々、そして京都の街に唯一無二の価値を提供できると考えています。
趣の感じれられるアーチ型の入り口
革新的でありつつ、伝統的な雰囲気を感じさせるデザイン
四季折々の景色を散策しながら楽しめる中庭
ショッピングだけではなく新風館ならではの雰囲気を楽しめる
「新風館らしさ」が表れている取り組みにはどんなものがありますか?
館長:京都らしさや「伝統と革新」を基準に選定した、アート・カルチャーを発信しています。例えば、江戸時代から続く、京都の老舗の提灯(ちょうちん)店による「提灯インスタレーション」や、京都出身のアーティストとコラボしたイルミネーションなどを展開しました。京都在住の畳職人の方にポップアップイベントを依頼する予定もあります。また、館内の『エースホテル京都』でも、京都に所縁のあるアーティストのアート作品を数多く展示しています。
それから、満月の夜に行う「フルムーンイベント」も、特徴的な取り組みのひとつです。日本で古くから特別な日とされてきた満月に着目し、アート・カルチャーを発信するイベントを行っています。
同志社交響楽団とのコラボでは、地域との温かいつながりを実感
フルムーンイベントには、同志社大学の同志社交響楽団のみなさんが
出演されたそうですね。
館長:京都を代表する同志社大学の歴史ある交響楽団ということで、まさに『新風館』のコンセプトに合うと考え、出演を依頼しました。
同志社交響楽団のことを知ったきっかけは、私が新風館内の焼鳥屋で食事をしていた際、その店でアルバイトをしていた男子学生と話したことでした。実は、彼は楽団の一員だったのです。彼にフルムーンイベントで良質な音楽を届けたいと考えていることを話すと、同志社交響楽団の100年近く続く伝統や、海外公演の実績などを熱く語ってくれました。その話を聞いて、後日正式にオファーすることにしました。
杉本さん:オファーをいただいたときは、何度も訪れたことがある『新風館』で演奏できるなんてとても光栄だと思い、みんなで喜びました。
フルムーンイベントへの出演にあたり、大変だったことはありますか?
杉本さん:フルムーンイベントでは、普段のオーケストラとは違い、アンサンブルで演奏します。そのため、通常の演奏会の練習や学業と並行して、フルムーンイベントのための特別な練習が必要になりました。時間をつくるのはなかなか大変でしたね。
笠原さん:イベントのコンセプトや聴いてくださる方のことを考えて曲を選んだり、同志社交響楽団のことを紹介するチラシをつくったりと、時間は限られていますがやることがたくさんあって。でも、新しいチャレンジでやりがいがありましたし、一人ひとりの演奏スキルの向上にもつながると考えていたので、精一杯やり遂げました。みんなが知っている新風館で演奏できることもモチベーションに繋がったと感じています。
ちなみに、演奏曲は「月にちなんだ曲」をクラシックからポップスまで幅広く選びました。多くの方々にとってなじみのある曲だったので、親しみをもって聴いていただけたのではないかと思います。
フルムーンイベントでの演奏への反響はいかがでしたか?
館長:老若男女を問わず、たくさんのお客様に楽しんでいただけたと思います。会場となった中庭は、とても賑わっていました。みなさん、夢中になって聴いている様子でした。
杉本さん:Instagramに演奏している動画を投稿すると、普段とは比べ物にならないくらい多くの「いいね」がつき、想像以上の反響に驚きました。
笠原さん:なにより嬉しかったのは、多くのお客様が演奏後に声をかけてくださったことです。「とてもいい演奏だったよ」「(ご自身やご家族が)同志社に通っていたんだよ」「交響楽団のこと、知っているよ」など、温かい言葉をたくさん頂いて、「地域とのつながり」を実感できました。
演奏者とお客様との間に「つながり」があると、きっと音楽の聴こえ方は変わってくると思います。新風館を訪れた京都の方々に、私たちだからこそ届けられる音があったのであれば、とても嬉しいですね。
フルムーンイベントを経て、心境の変化はありましたか?
杉本さん:これまでも校友会などから依頼を受けて演奏をした経験はありますが、大学と直接的な関係のない施設から、しかも屋外でアンサンブルの演奏をしてほしいとお声がけをいただいたのは初めてでした。冒険ではありましたが、得られるものが多かったと感じています。
今後もこういう機会があれば、どんどん挑戦したいです。例えば、地域の幼稚園や小学校、高齢者向け施設などにも行ってみたいですね。フルムーンイベントでの経験に刺激されて、地域貢献活動をもっとやってみたいと考えるようになりました。
文化の発信と「つながり」の提供で、京都の街に価値を届け続ける
今後のフルームンイベントについて、展望があれば教えてください。
館長:同志社大学とのつながりは、これからも深めていきたいと考えています。同志社交響楽団のみなさんのほかに、フラダンスチームに出演してもらったこともあります。さらに幅を広げていきたいですね。
また直近では、京都の民族楽器店からヒントを得て、日本ではまだあまりなじみのない民族音楽の演奏を行う予定があります。引き続き、新風館を訪れる方々が伝統的な、もしくは日頃触れる機会が少ないアート・カルチャーと出会える場を提供していけたらと考えています。
今後の新風館がめざす姿についてお聞かせください。
館長:地域の方々との交流が生まれる「ハブ」のような役割を担っていきたいと思っています。新風館を訪れた方々が、お互いの関係性を確認、構築できる場所になったらとても嬉しいです。今回の同志社交響楽団の例でいうと、「現役の学生さん」と「卒業生をはじめとした大学を応援する地域の方々」との交流を生むことができました。そういった温かいコミュニケーションを促進して、「つながり」をより強固にすることで、今後も地域を盛り上げていきたいです。
そして、京都の方々に「私たちの街に新風館があってよかった」と感じてもらいたい。これからも、そんな理想の姿をめざし続けたいと思います。
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