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としまみどりの防災公園 日常も非常時も集える“フェーズフリー”公園
~イケ・サンパークの狙い~(公園整備編)
日常も非常時も集える“フェーズフリー”公園 としまみどりの防災公園(愛称、IKE・SUNPARK)
賑わいと
憩いの場を創る
BCP対応

NTTアーバンソリューションズグループは、街に、社会に、さまざまな価値を提供することにより、地域社会の課題解決に取り組んでいます。本シリーズでは、その取り組みを具体的にご紹介。
今回は、豊島区池袋にある「としまみどりの防災公園」を通して日常の憩いの場でありながら、非常時のBCP対応も兼ね備えたNTTアーバンバリューサポートの公園事業についてお伝えします。

物件概要

物件名:としまみどりの防災公園

木造密集市街地が広がる東京都豊島区の東池袋4・5丁目エリア。災害時に逃げ込める空間が欲しいという地元の要請を受け、約3.2haの広さを持つ独立行政法人造幣局東京支局跡地の一部に、区と独立行政法人都市再生機構(以下、UR都市機構)が公募のうえで選定した民間事業者と連携し、「としまみどりの防災公園(愛称、IKE・SUNPARK)」を整備した。平常時は、利用者が集うにぎわいの場。池袋駅周辺に立地する4つの公園の一翼を担う公園として、回遊性を高める拠点になることが期待される。

「にぎわい創出編」はこちら 当該ページを別ウィンドウで開きます

日常も非常時も集える"フェーズフリー"公園
~イケ・サンパークの狙い~(公園整備編)

午後のひと時、平日でも園内はベビーカーを押す親子連れでにぎわう。オープンな造りのカフェはもとより、広大な芝生広場にも、多くの親子が集う。としまみどりの防災公園、愛称「IKE・SUNPARK(イケ・サンパーク)」の日常の一コマだ。

場所は、東池袋駅から地上60階建てのビルがそびえるサンシャインシティ方面に徒歩で5分ほど。独立行政法人造幣局東京支局が立地していた跡地約3.2haの一部に整備され、2020年12月に公園全体がオープンした。

お話を伺った方

「IKE・SUNPARK(イケ・サンパーク)」の広場。
普段は家族連れでにぎわい、災害時にはヘリコプターが着陸可能な場所となる
(写真提供:Forward Stroke inc. )

名前の通り、災害時には一時避難場所としての役割を担い、約9,000人もの地域住民らが逃げ込める。中央に広がる約6,500m2の平坦な芝生広場は、ヘリポートとしても機能する。また井戸や貯水槽を用いた給水施設や、最大72時間稼働する非常用発電装置、太陽光発電装置といった電源設備も備える。広さは地元の豊島区内の公園として最大の約1.7haにも及ぶ。

区内最大規模の公園だけに、開園前後の変化は著しい。豊島区 都市整備部 公園緑地課長の片山裕貴さんは「池袋駅方面からの人の流れは開園まではサンシャインシティで止まっていました。それが開園以降、サンシャインシティを越えたこの一帯まで流れ込むようになりました。区外からも多くの利用者が訪れています」と話す。

開園後は、「令和2年度 全建賞(一般枠 都市部門)」「PHASE FREE AWARD 2021 Silver(事業部門)」「グッドデザイン賞」など、数々の受賞にも至った。このうち一般社団法人フェーズフリー協会から受賞した「PHASE FREE AWARD 2021」は、片山さんにとってとりわけ印象深いという。その理由を、片山さんはこう話す。

「平常時から親しんでいる公園が災害時には一時避難場所として役に立つのは、重要なことです。子どもから高齢者まで、『いざというときには、あの公園に逃げ込めばいい』と、すぐ思い浮かべられるからです。そこを評価していただいたのは、うれしいですね」

インタビュー写真

豊島区 都市整備部 公園緑地課長 片山裕貴さん

インタビュー写真

公園内には平時でも使用可能な井戸が設置されている

フェーズフリーとは、身の回りにあるモノやサービスを、日常時はもちろん、非常時にも役立てることができる、という考え方。平常時には利用者が集い、災害時には地域住民らが逃げ込めるイケ・サンパークはまさに、この考え方を象徴する存在だ。

地元の悲願叶い防災公園を整備

安全・安心の公園づくりは、実は地域住民にとって古くからの悲願だった。周辺一帯には木造密集市街地が広がり、災害時は延焼火災による危険度が高いエリアだからだ。延焼を食い止め、一時避難場所にもなる、広大な空地が求められていた。

豊島区はそもそも人口が多い割に公園面積が少ない。「区民1人当たりの公園面積でみると、東京23区内で最も少なく、地元からは公園の整備そのものを求める声も古くから上がっていました」と、片山さんは振り返る。

豊島区は悲願の防災公園整備に向け、2014年10月に「造幣局地区街づくり計画」「(仮称)造幣局地区防災公園基本計画」を立て続けに策定。その一方で、跡地取得と公園整備に向け、UR都市機構との連携を決める。

その理由を、片山さんはこう説明する。「跡地を区が単独で取得し防災公園を整備することは、財政的に困難でした。そこで、防災まちづくりに経験が豊富なUR都市機構に、費用の一部を一時的に肩代わりしてもらう『防災公園街区整備事業』という手法を採用することになりました」。

基本計画では公園整備の考え方として2つの柱を打ち出していた。一つは「多くの人々が憩い、地域が賑わう公園づくり」。もう一つは「安全・安心の公園づくり」だ。「にぎわい」と「安全・安心」は、この段階から柱に据えられていたのである。

この2つの柱、とりわけ「にぎわい」の確保に向け、豊島区とUR都市機構は民間事業者との連携に乗り出す。そこで用いたのが、当時創設されて間もない民間資金を活用する公募設置管理制度(Park-PFI)だ。

この制度は、公募で選定した民間事業者に公園内の便益施設の設置・管理を許可するもの。広場や園路などの整備費用を、民間事業者が便益施設からの収益で賄う仕組みのため、自治体はその整備費用の負担を軽減できる。一方、民間事業者にとっては、制度創設の前から設置・管理可能だった便益施設に比べ、より規模の大きな案件を、より長期にわたって設置・管理可能なため、長期的視野で事業性を確保できるという利点がある。

豊島区とUR都市機構はこのPark-PFIに、さらに公園全体の設計、施工、管理・運営を担う民間事業者を一体的に選定する方法を組み合わせた。また、管理・運営は、公共施設の管理・運営を民間事業者などに任せる指定管理者制度を利用した。

通常、公園を整備し管理する場合、設計、施工、管理・運営を担う受注者は個別に選定するが、それでは設計段階のコンセプトが管理・運営段階にまで反映されづらい。受注者を一体的に選定すれば、設計段階から管理・運営のことをより意識することによって、より良い管理・運営を見込める。
記事冒頭の画像 写真提供:Forward Stroke inc.

まちを耕すプレイヤーを育てる

このスキームの良さを、片山さんはこう説明する。「植栽については、植えたときの状況から分かっているほうが維持管理をしやすいはずです。また防災関連の設備についても、設計意図まで理解しているほうが災害時により的確に運用してもらえるでしょう。管理・運営段階を想定したトータルデザインにも期待できます」。

豊島区とUR都市機構は2018年1月、技術提案や価格提案を求める公募型プロポーザルを経て民間事業者を決めた。選定相手は、民間4団体のコンソーシアム(複数の企業が共同企業体を組成して、一つのサービスを共同で行う取引)。代表企業として統括業務を担当する日比谷アメニス、設計業務を担当する都市計画研究所、施工業務を担当する株木建設、維持管理業務を担当するNTTアーバンバリューサポートで構成する。指定管理者は、日比谷アメニスとNTTアーバンバリューサポートの共同企業体だ。

管理・運営段階まで一貫して関わる日比谷アメニスと、NTTアーバンバリューサポートの2社がこのコンソーシアムに名を連ねた狙いは、公民連携の動きが加速する公園事業で地域のまちづくりに携わることにある。

日比谷アメニスは、もともと公園・緑地の整備・管理・運営が事業の柱。同社コミュニティビジネス運営部に所属し、現在イケ・サンパークで管理事務所の所長を務める村田尭弘さんは「私たちの部門では指定管理を通じて地域の課題を解決する事業を展開しています。設計、施工、管理・運営を担う民間事業者を一体的に選定するこの先進的なプロジェクトにはぜひ、参画したいと考えていました」と振り返る。

一方、NTTアーバンバリューサポートは建物・ICT・エネルギー等の総合的なマネジメントを展開。公園の運営・管理は新たな事業領域と位置付ける。同社リレーション推進本部 開発営業部 エリアマネジメント推進担当 統括担当課長の西尾正義さんは「今後は公共ビジネスの領域にも積極的に取り組んでいく方針です。そうしたなかでビルの管理だけではなく、公園やエリア全体のマネジメントにも実績を積み、ノウハウを獲得しさらにまちづくりへの取り組みを拡大していく狙いから、このプロジェクトへの参画を決めました」と話す。

四季折々の景色を散策しながら楽しめる中庭

日比谷アメニス コミュニティビジネス運営部
豊島区立としまみどりの防災公園 管理事務所 所長 村田尭弘さん

ショッピングだけではなく新風館ならではの雰囲気を楽しめる

NTTアーバンバリューサポート リレーション推進本部 開発営業部
エリアマネジメント推進担当 統括担当課長 西尾正義さん

公募型プロポーザルの提案では、豊島区が2014年10月に定めた基本計画を踏まえ、公園の将来像について3つのビジョンを打ち出した。「まちを耕すプレイヤーを育てる」「姿を変え成長し続けるオープンスペース」「アーバンコンベンションの具現化」である。これら3つのビジョンの実現を目指し、公園の具体的な造りや運営を提案した。

提案の目玉のひとつに、「KOTO-PORT(コト・ポート)」と呼ぶ小型店舗がある。飲食・物販事業者やアーティストなどに短期の定期借家契約で貸し出し、期間を限って事業を営んでもらう可動式の店舗だ。「まずここで地域住民に認知してもらい、将来は池袋エリアに店舗を構えてもらう想定です。このサイクルを通して、まちの活性化を図るという発想に立っています」(日比谷アメニス 村田さん)。まさに、「まちを耕すプレイヤー」の育成である。

お話を伺った方

「KOTO-PORT(コト・ポート)」外観。こだわりのショップが軒を連ねる。
屋外での飲食はおいしさ倍増!

また災害時に備えオープンスペースを確保する必要があるため、固定の建造物は最低限に抑え、平常時には「姿を変え成長し続けるオープンスペース」でファーマーズマーケットをはじめとする各種イベントを開催し、賑わいをみせている。

「アーバンコンベンション」でめざすのは、地域のつながり強化だという。その具体化の仕掛けとして整備するのが、「コミュニティガーデン」だ。花や野菜の栽培を通じて、施設と地域住民との、また地域住民同士の交流を深めている。

コンセプト重視しカフェを誘致

一方で、豊島区内最大規模の公園として大規模なイベントの開催も想定する。西尾さんは「地域住民から愛されるように草の根のつながりを大事にしながらも、オープンスペースに多様な人を集める大規模なイベントも開催していく方針です」と語る。

受注後は、プランを総合的に磨き上げるため、デベロッパーとして建築設計部門を抱えるNTT都市開発が総合デザイン監修として加わった。「提案時のプランをベースに、審査委員の指摘事項であった公園全体のリデザインに踏み切りました。さらに豊島区の上位計画(アフターザシアターなど)により合致する形で、夜間の公園利用や景観を意識し、照明デザインにもこだわりました」(村田さん)。

インタビュー写真

夜間の景観を意識した照明デザイン(写真提供:Forward Stroke inc. )

インタビュー写真

公園内のカフェ「EAT GOOD PLACE」(イート グッド プレイス)。
平日でもランチ時は行列ができるほど。親子連れ、ペット連れにも優しい

公園整備工事を終えたエリアは2020年7月にプレオープンし、同年12月、備蓄倉庫やカフェの建設工事を終えた段階で、公園全体としてグランドオープンを果たした。

カフェは「にぎわい」の核として用意したものだ。NTTアーバンバリューサポートはテナント誘致交渉においても力を発揮した。NTT都市開発の商業事業部門と連携し、東京区部で飲食事業を展開するエピエリが運営するカフェを誘致した。

「私たちがこだわったのは、公園のコンセプトに共感してもらえる独創的なカフェの誘致だ」と西尾さんは言う。「将来、コト・ポートやイベントとの連携も考えられます。そういうときには、例えばメニューの面で柔軟な対応が可能なカフェを探しました」。

ただ当時は、決して事業性の見込める立地とは言えず、誘致交渉には苦労しました、と西尾さんは明かす。冒頭、片山さんが語ったように、人の流れが見込める商業地は池袋駅方面からサンシャインシティまで。それを越えた公園方面は当時、住宅地と見られていた。

「誘致交渉で接触した飲食事業者のなかには、ここでビジネスが成り立つのか、不安を示す事業者も見られました。土壌改良工事中で現地に何もないなか、完成イメージ図を示しながら、ここが将来は憩いの場になることを懸命に訴えました」(西尾さん)

開園後のいま、カフェは多くの利用者でにぎわう。「東京都内で新型コロナウイルス感染症の拡大が落ち着きを見せた2022年4月以降、平日でもランチ時は行列ができるほどです。地域住民の支持を得ていると感じます」と、村田さんは笑顔を見せる。

豊島区はこれまで「公園がまちを変える」をコンセプトに掲げ、池袋駅周辺で「南池袋公園」「中池袋公園」「池袋西口公園」という3つの公園の再整備を進めてきた。イケ・サンパークは、このコンセプトの下で整備された最後の公園だ。今後は、これら4つの公園を基点に回遊性を高め、にぎわい創出を図っていくことになる。

池袋駅は巨大ターミナルでありながら乗り換え客が多く、駅利用者がまちなかにまで足を延ばすことが少ないため、「駅袋」とさえ言われてきた。4つの公園には、「駅袋」からの脱却という願いも込められている。

インタビュー写真

豊島区の片山さんは「駅利用者にもまちに繰り出してもらい、これまで以上ににぎわいのあるまちにしていきたいと考えています。そのためにも、4つの公園を基点に回遊性を高め、歩いて楽しめるまちづくりを進めていきます」と、公園の役割に期待をにじませる。

お話を伺った方

(左)NTTアーバンバリューサポート 西尾正義さん、(中央)豊島区 片山裕貴さん、
(右)日比谷アメニス 村田尭弘さん

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