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  • 街づくりDTC®から見えてくる未来の姿 Vol.04イノベーションはバーカウンターで起こる

バーカウンター中心のオフィス

社内の新規事業開発を任された中堅社員A氏は、通常はテレワークを行ないながらも、ときには情報収集のため、自社が参画するイノベーションハブに出勤する。そこは街づくりDTC®を導入し、複数の企業がイノベーションのために集う基地だ。

出勤したA氏がまずはじめにするのは、上司へのご機嫌伺い...ではない。そのハブに併設されている「マスター」への挨拶だ。イノベーションハブの中心には、アルコールも含む飲み物を提供するバーカウンターが併設されており、そこにはマスターと呼ばれる、会話機能を持ったロボットが常駐しているのだ。

朝のコーヒーを注文しながら、A氏はマスターと雑談し、今日のニュースについて意見を交換する。天気の話題から、最新のテクノロジーの動向まで、もちろん日によって情報は異なる。街づくりDTC®とも連携し、ローカルの情報も得られるのがうれしい。マスターに「最近売れてるらしいですよ」とおすすめされた新刊のビジネス書をその場で注文すると、バーから出るころには手元に書籍が届いている。マスターから勧められた書籍を買うのは、A氏にとって毎週の楽しみのひとつだった。

マスターが教えてくれるのは、インターネット検索のみでは手に入らない生の情報だ。グローバルな情報に加えて、都市のなかで取得されたリアルタイムのデータ、さらにバーのお客が語る「口コミ」を総合、さらにお客の興味関心や仕事に合わせて、知的活動をブーストする雑談が提供されている。

煮詰まった会議を「ステア」する

昼休み、A氏は空いた会議室に入り、共同で事業開発を進める他社のB氏とランチをしながら雑談に興じる。先ほど買ったビジネス書の話題で少し盛り上がるが、事業の話になると少し会話が行き詰まってくる。プロジェクトは転換点を迎えつつあり、どうやら新しいアイデアが求められているようだ。

午後になるとA氏とB氏はバーに立ち寄り、マスターにファシリテーションを任せてブレインストーミングを実施することにした。もちろんお酒はなしだ。実は街づくりDTC®が蓄積したデータは、この地域のなかではイノベーションのためには開示してもよいルールになっている。

マスターは、サービスとしてチョコレートをさし出しながら、最近街のコンビニではとあるお菓子の売り上げが上昇していることを教えてくれた。さらにマスターは顧客アンケートの情報や市場調査データをホログラムで投影しながら、このお菓子を買う人々のなかには精神的不調を感じている人が少なくないこと、このお菓子で一息つくことによってリラックスできるという声が多かったことを明かす。若年層のウェルビーイングを向上させるプロダクト開発に取り組んでいたふたりにとっては、機能性追求という視点だけでなく、リラクゼーション効果という視点での検討ポテンシャルに気づかせてくれる貴重なデータである。そこを皮切りに、徐々に事業に足りない技術や知見がA氏とB氏の議論のなかで明らかになってくる。マスターはまるでドリンクをステアする(かき混ぜる)ように、A氏とB氏の煮詰まった思考を解きほぐしてくれた。

人と人がニュートラルにつながる

夕方、業務が終わって帰ろうとしたA氏だが、マスターに呼び止められる。好物のウイスキーが時間限定で半額になっているという。一杯だけと思って酒を飲んでいると、隣に座った別の客が、マスターと興味深い話をしている。

よくよく聞くと、それは昼のブレインストーミングで明らかになった、自分たちの構想する事業の課題に関係する内容だった。客は最近イノベーションハブに参画した企業の社員で、大学で音楽理論を学び、人がリラックスできるメロディーとリズムについて研究していたのだという。A氏がマスターに目配せすると、マスターは自然なタイミングでその客にA氏を紹介する。その日をきっかけにA氏は新たな人脈を得て、事業開発は前進しはじめた。

イノベーションが起きるためには、奇跡ともいうべき人と人、人と情報の出会いが不可欠になる。A氏はこの場所にきて、その思いを新たにしている。そして、その偶然が起きるためには、ほんの少しの「スパイス」が必要になることがある。街づくりDTC®と連携することで、マスターはカクテルを仕上げるように、イノベーションをつくっているのかもしれない。