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  • 街づくりDTC®から見えてくる未来の姿 Vol.03いつでもどこでもローカルな経済圏とつながれる

地域とつながるプラットフォーム

A氏は、品川に住み日本橋のIT企業で働いている。かつてのA氏が住居を品川に定めたのは、ここが利便性の高い街だったからだ。出張が多いA氏にとって新幹線やリニアが通った品川は非常に便利であり、近くにスーパーは少なかったが生活必需品も食品もオンラインで買えばすぐ手に入るので不便はない。休みの日はシェアサービスを使って自律走行車に家族で乗り、郊外に出かければ自然とも触れ合える。家族とともに住むには十分に便利な場所だった。

街づくりDTC®の普及によって、A氏は利便性だけではない魅力に気づけるようになったようだ。近年A氏の住むマンションの周辺では河川エリアを中心とした湾岸部の開発が進み、小型船のような水上モビリティを使った移動が積極的に推進されることとなったのである。船通勤を選ぶと補助金が出ることもあって船を使い始めたA氏だったが、デジタルツインと連携することでこの船は地域とつながるプラットフォームにもなっていた。

昔から品川のあちこちに点在していた商店街や個人商店は駅前の商業ビルやモールによってその規模が小さくなっていたが、数年前から若い店主を中心とした商店街組合がドローンや自走型キオスクを導入し、街中に展開しはじめていた。駅前やマンションの共用部を配送先として始まったこの「分散型個人商店」サービスは、次第に"場所"ではなく"人"を対象として広げていった。もちろん、その展開先として水上交通が含まれるのは言うまでもないだろう。

ローカルの楽しみを再確認する

A氏がこの新しい個人商店に触れたのは、船に乗って通勤していたときのことだった。ぼんやりと外を眺めていると、遠くから箱型のドローンが近づいてくるのが見える。「朝食にパンとコーヒーはいかがでしょうか?」。どうやらそのドローンは、駅近くの商店街で昔から営業している小さなパン屋が飛ばしているものらしい。

いつもオフィスに着いてから朝食をとることにしていたA氏だが、この日は気が向いて買ってみることにした。できたてのクロワッサンとホットコーヒー。それはなんの変哲もない商品だったが、一口食べた瞬間にA氏は自分が品川に住みはじめたころの生活を思い出したのだった。品川に引っ越したばかりのA氏はまだ地元の文化に興味があり、休みの日はあちこちいろいろな商店街を回っては食事や買い物を楽しんでいた。A氏が口にしたクロワッサンは、まさにその頃たまたま立ち寄ったパン屋で食べたもの。朝の風に吹かれながら、A氏は自分がすっかりローカルな街並みを忘れてしまっていたことに気付かされたのだった。

懐かしい気持ちに浸りながら、A氏はドローンからQRコードを読み取り、地元の商店街が構築した個人商店プラットフォームへと登録した。さらに自分が使うモビリティを商店プラットフォームと紐付け、日々かつて自分が触れていた商店街の商品を楽しむようになっていった。家族揃って自宅でくつろぐ際やオフィスで仕事仲間と賑わう際も、食事やドリンクを地元の商店から呼び出したドローンを使って注文し、自分が住む街とのつながりを実感できるようになった。

地域とのつながりを強めるための街づくりDTC®

こうしたサービスが実現したのは、街づくりDTC®の普及によるところが大きい。船・車・バイクといったモビリティはもちろんのこと、地域の小さな商店もデジタルツイン化し位置や目的地に合わせて最適な商品やサービスが自然に提案されるようになっている。人の流れや環境もデジタルツイン化されているため、通勤時や退勤時は混雑状況に合わせて最適なルートが提示されるし、その日の体調によっては少し遠回りして新鮮な景色を見せてくれることもあるという。

A氏はかつての生活を振り返り、便利な生活を送っている一方で自分の住む地域とのつながりがすっかり失われていたことに気づかされたのだった。その点、地域の商店と街づくりDTC®でつながる商店街プラットフォームなら便利なサービスを享受しながらも常に地域の存在を感じられるし、地域へコミットできている実感が生まれていることが嬉しかった。もはやA氏にとって品川はただ便利な街ではなくなったのだ。