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博多イーストテラス 福岡・博多駅の筑紫口が発展中
オフィスビルを超えた賑わいの場にご注目
福岡・博多駅の筑紫口が発展中 博多イーストテラス
賑わいと
憩いの場を創る
働きやすい
オフィス環境
BCP対応

NTTアーバンソリューションズグループは、街に、社会に、さまざまな価値を提供することにより、地域社会の課題解決に取り組んでいます。本シリーズでは、その取り組みを具体的にご紹介。
今回取り上げるのは、九州の陸の玄関口である博多駅に近接し、高い交通利便性を持つ博多駅筑紫口エリアに位置する複合オフィスビル「博多イーストテラス」。オフィスワーカーのみならず、近隣住民や来街者を巻き込んだ賑わい創出に力を入れています。キーパーソンたちに、物件に対する思いを伺いました。

物件概要

物件名:博多イーストテラス

2022年8月に開業した複合オフィスビル。博多エリア最大級のオフィスフロアや、多様化する働き方に対応するサポート機能を備えたワークスペースのほか、緑があふれ、賑わいや日常的な憩いの場として機能する広場空間を有する。福岡市が官民連携で推進している「博多コネクティッド」規制緩和第1号物件でもある。

レジャーランドだった筑紫口のシンボル跡地に誕生

博多駅には博多口、筑紫口と二つの出口がある。前者は旧市街の華やかな通りに面した出口だが、後者のイメージは前者と比べるとやや希薄だろう。メジャー出口とマイナー出口の格差は全国主要都市のターミナル駅では珍しくないものの、オフィス・官庁街を中心とする筑紫口は繁華街に向かう博多口に対して落ち着いた印象である。

しかし、そうした光景が徐々に変わりつつある。契機は2019年からの10カ年計画として福岡市が発表した「博多コネクティッド」である。博多駅を中心とした半径500メートルの範囲内で更新期を迎えたビルの建て替え促進や歩行者ネットワークの拡大を図り、周辺の回遊性を高めることを目的とする。筑紫口の再開発も進み、2022年には博多駅筑紫口駅前広場を整備。歩きやすいゆとりのある空間に変貌を遂げた。

次世代のまちづくりに向け、博多コネクティッドでは「博多コネクティッドボーナス」を用意している。一つが既存の容積率緩和制度に加え、最大50%の容積率を付与する新規インセンティブ、もう一つが屋根のある広場などでも公開空地評価を最大2.5倍にする取り組みだ。認定要件は回遊空間の創出、魅力的な広場空間の創出、緑化の推進、ユニバーサルデザインの配慮になる。

博多イーストテラスの外観。建物前の広場にも緑が広がる(写真提供:NTT都市開発/©川澄・小林研二写真事務所)

複合オフィスビルの博多イーストテラスは、博多コネクティッド規制緩和第一号として2022年8月に竣工した。博多エリア最大級のオフィスフロアを持つ。南側、北側双方に豊かな緑が植えられた広場を構え、1階にカフェ&バーとスモールオフィスを併設。オフィスにつながるエントランスにはセキュリティゲートや非接触の体表温検知システムを配置し、館内で働く人たちの安心・安全を守る。

解放感のあるスモールオフィスとセキュリティゲート(写真提供:NTT都市開発/©川澄・小林研二写真事務所)

かつてこの地には、筑紫口のシンボルでもあったレジャー施設「博多スターレーン」が建っていた。その名の通りボウリング場で親しまれたが、それ以上に「プロレスの西の聖地」としてプロレスファンに愛されてきた。開発の経緯について、NTT都市開発 開発本部 開発推進部 担当部長 川久保愛太(かわくぼ・あいた)さんは次のように語る。

「オフィスでありながらもたくさんの人たちが楽しめる空間づくりを念頭に置きました。博多コネクティッドの要件として福岡市からも要請されていましたが、我々としても博多ならではの古き良き場所の、賑わいの面影を残したいとの思いがありました」(川久保さん)

NTT都市開発 開発本部 開発推進部 担当部長の川久保愛太さん

先に触れたように、筑紫口はオフィスや官庁がメイン。博多イーストテラスからすぐの場所には福岡合同庁舎がずらりと立ち並び、朝晩の通勤時はスーツに身を固めたビジネスマンが集う一方で、専門学校が集まったエリアもあり、そちらには若い学生が固まっている。

「そうした意味でも、筑紫口利用者のタイプは二極化しています。仕事や学校など一方通行のまちのイメージが強い。しかし博多イーストテラスは地域住民や来街者が足を運びたくなることをコンセプトに掲げ、まちの中に"点"を打つことをめざしました」(川久保さん)

この言葉通り、単なるオフィスビルを超えた仕掛けが満載だ。1階南側の広場には毎日キッチンカーが出店し、周辺のオフィスワーカーや学生たちが日々訪れる。南広場に向かって右側には、東京からカフェ&バーの「フグレン」を誘致。ノルウェーのオスロに本店があるフグレンは知る人ぞ知るエッジの立ったカフェ&バーで、東京・神奈川以外では初の出店となった。そのため、フグレンを目当てにやってくる人たちも多い。

「ここが拠点となって周囲に活気が生まれれば、洗練されたバルやカフェ、レストランなどが増えてくるのではないでしょうか。まずは博多イーストテラスが先頭ランナーとなり、筑紫口のこれまでのイメージを覆す役割を果たしたいと考えています」(川久保さん)

1階南側広場に日替わりで登場するキッチンカー(写真提供:NTTアーバンバリューサポート)

ニューノーマルを実践するスモールオフィスを設けた意義

空間づくりのコンセプトメイキングや、オープン後のイベント運営に深く関わるパートナーがNSFエンゲージメントだ。2019年10月、ソニーコーポレートサービス(現ソニーピープルソリューションズ)とNTTファシリティーズの合弁会社として誕生した"ソニーとNTTのDNA"が流れる企業である。折しも博多イーストテラスの施工期間と重なったこともあり、新風を吹き込む意図で協力を仰いだ。

「オフィスワーカーのみならず地域住民等の来街者が南北の広場を自由に利用できます。そのため、南北を結ぶ1階の通路は不特定多数の人が通る重要な位置づけになります。どのようにデザインすべきか悩んでいたところ、ちょうどグループ会社に加わったNSFエンゲージメントに斬新なアイデアを提案していただきました。それが、緑、音、光を総合的に組み合わせたクロスモーダル(感覚間相互作用)の演出です」(川久保さん)

通路にはNSFエンゲージメントが「奏でる緑」をコンセプトにデザインしたサウンドが流れ、壁面には大型ディスプレイをデジタルサイネージとして配置。ディスプレイには九州の展覧会で優秀賞を受賞したデジタルアートが表示され、通行するだけで美術館を訪れたかのような豊かな気持ちになる。

通路に設置されたデジタルサイネージ。「アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA」の外部展覧会場として、アート作品の展示も行っている(写真提供:NTT都市開発/©川澄・小林研二写真事務所)

その1階通路の脇に、NSFエンゲージメントが展開するハイブリッド型スモールオフィス「Mol.t(モル・ト)」がある。Mol.tとは「Meaning of life」(人生の意義)と「Molt」(脱皮・羽化)をかけ合わせた造語だ。

個別空調方式の専用個室と、個室契約者専用のコラボレーションスペースを備え、置かれた家具・什器類は北欧製を中心とした意匠性と機能性の高いものばかり。個室は2人用、3人用、6人用の3タイプで、スピーディなスモールスタートに向いている。6メートルにもおよぶ共有空間の天井高も相まって、足を踏み入れた瞬間に「おしゃれ」とつぶやきたくなる造りだ。オフィス内にも独自のサウンドデザインを施し、リラックスしながら働ける環境を整えた。

階段に設置されているMol.tのロゴも実はスピーカー。さりげない工夫に環境づくりのこだわりが表現されている

インタビュー写真

NSFエンゲージメント 広報課 統括課長の飯川裕太さん

NSFエンゲージメント 広報課 統括課長の飯川裕太(いいかわ・ゆうた)さんは「いまの時代と調和する働き方や新しい価値を提供することが私たちのミッション。Mol.tは博多駅筑紫口の賑わい創出を支援するための場と捉えています」と話す。入居者は福岡で新しくビジネスを始める企業や、新たなチャレンジをしたいスタートアップ、リモートワークを取り入れたハイブリッドワーク企業を想定。大きな床下収納やオンライン会議を手軽にできる遮音性に優れたフォンブースを複数設置。動画配信に対応したスタジオにはソニー製のカメラや音響機材をそろえ、商談、会議を一層有意義なものにする。コラボレーションスペースは地元の交流会イベントなどにも貸し出す。まさに旧来の枠に囚われない新しい働き方に即した空間と言える。

Mol.tと博多イーストテラスで働くオフィスワーカーは、自由なワークスタイルを実践できる。「鍵となるのはABW(アクティビティ ベースト ワーキング。仕事の目的や内容に合わせて、働く人が自ら働く場所を選ぶ働き方)。オフィスにとどまらず、カフェ、1階エントランスのタッチダウンスペース、開放的な屋上や南北の広場など、柔軟な働き方に対応できるのがポイントです」。そう話すのはNSFエンゲージメント NSクリエイション部門 クリエイティブセンター WaaS推進室室長の松田友美(まつだ・ともみ)さん。さらにMol.tならではの特徴が、ワーケーション(観光地やリゾート地などの非日常空間でリラックスしながら働くスタイル)を組み合わせたハイブリッド型だという。

「福岡を中心にシェアオフィス事業を展開するSALTと提携し、Mol.tの入居者はシーサイドのシェアオフィスや、温泉旅館をリニューアルした施設も利用できます。ワーケーションを日常に取り入れるとともに、アクティビティの提案やコミュニティ作りもご支援するなど、働く人のやりがいや生きがいが見つかるようなサービスを提供するのも特徴です。福岡市は移住先としても人気が高く、コンパクトな都会でありながら豊かな自然にすぐアクセスできるのが強み。そうした魅力を存分に味わい、WORKとLIFEのFULLNESS(充実)に寄り添うことが私たちの願いです」(松田さん)

インタビュー写真

NSFエンゲージメント NSクリエイション部門 クリエイティブセンター
WaaS推進室室長の松田友美さん

飯川さんは「これぞ福岡だからこそ提供できる価値。当社では創造と挑戦をテーマに掲げており、さまざまなパートナーとコラボしながらオープンに進めていくことを基本としています。福岡でチャレンジしたい人たちをMol.tに呼び寄せ、地域一帯の活性化に役立ちたい」と語る。最新のハイブリッド型スモールオフィスは、博多イーストテラスの潤滑油として大きなインパクトをもたらしてくれるに違いない。

オフィス街に新たな火を灯したカッコいいカフェ

フグレンの誘致にもNSFエンゲージメントが貢献した。フグレンは東京の奥渋谷と呼ばれるエリアにひっそりと日本の本店を構え、そのほかの店舗も浅草の外れや世田谷の住宅街などに位置し、派手な展開をしていない。にもかかわらず熱心なファンが足繁く通うカフェ&バーとして知られる。

川久保さんは「当初から1階の一角はカフェを想定していましたが、"筑紫口エリアが変わった"と思える個性豊かなカフェを誘致したいと考えました。その狙いにフグレンはぴたりとはまりました」と振り返る。そのオファーを聞いたNSFエンゲージメントのスタッフは、是非、フグレンを誘致したいと思ったそうだ。共通の知り合いを介しフグレン日本代表の小島賢治(こじま・けんじ)さんに話が持ち込まれたが、最初は難色を示したと話す。

インタビュー写真

フグレン 日本代表の小島賢治さん

「実は2回お断りしたんです。ちょうどコロナ禍で打撃を受け、新規出店はギャンブルだなと感じていたからです。でもNSFエンゲージメントさんは何度も話をしにきてくれて、折衝役の方はいまでも自転車でふらりとフグレンに来てくれるほどのファン。ビジネスライクではない接し方に好感が持てましたし、この人たちとなら信頼できるパートナーとして一緒に歩んでいけるとの思いから決断しました」(小島さん)

福岡には「World Coffee Roasting Championship2013」で世界一を獲得した焙煎士、後藤直紀(ごとう・なおき)さんなどをはじめ、業界を引率するプロフェッショナルの活躍により、コーヒー文化が根付いていることも後押しした。知り合いのバリスタや焙煎士の人たちも、「あのフグレンが福岡に来る」と広めてくれたのだという。

「コンパクトシティの福岡市は港や空港も近く、山も海もすぐそばにあって、僕が修行したオスロの雰囲気にすごく近い。オスロでは、コーヒーを飲んでいるだけでカッコよく見える風景を目の当たりにしましたが、働く人たちのモチベーションを高めるようなカフェになりたいと思っています」(小島さん)

フグレンは通り沿いに面し、窓際のカウンター席は"カッコよくコーヒーを飲む人"のショーケースになっている。川久保さんは「典型的なオフィス街なのに、ノートパソコンを開いて作業している姿が日常的になりました。ほかのまちからマーケティングに来た人は、博多口でも天神(博多と双璧を成す福岡市の繁華街)でもないこの場所で、"筑紫口も行けるな"と思うはず。そうした良い影響を与えています」と評価する。

開業後のビル管理運営に携わるNTTアーバンバリューサポート 九州事業部 営業担当主任 今村友美(いまむら・ともみ)さんは、1階広場のイベント仕掛け人でもある。2022年9月29日〜10月2日の4日間にかけて、博多まちづくり推進協議会と連携した社会実証実験イベントを2日間と施設の開業イベントを兼ねたコーヒーイベントを2日間、連日開催した。NSFエンゲージメントと企画・運営を連携して開催したコーヒーイベント「PARK×COFFEE」には、福岡をはじめとする全国各地からこだわりのコーヒーショップ25店が集結。たくさんのひとたちが詰めかけ、大盛況となった。

2022年10月1日〜2日に開催した「PARK×COFFEE」(写真提供:NTTアーバンバリューサポート、NSFエンゲージメント)

「土日ということもあり、近隣の方々だけではなくいろんな地域から約三千人の方にお越しいただきました。筑紫口ではあまり見かけることのない家族連れも多く、広場の小高い芝生の丘で子どもたちがはしゃぐ姿が印象に残っています。開かれたまちづくりを実現するために、今後も博多まちづくり推進協議会とも連携を図りながら、博多イーストテラスが筑紫口の賑わいの核となるよう積極的に交流イベントを続けていく予定です」(今村さん)

川久保さんは「多様なアプローチで賑わいを創出することで、博多イーストテラスが新たな筑紫口のランドマークになることが目標です」と締めくくった。すでに筑紫口ではJR九州や福岡地所らが共同で福岡東総合庁舎の敷地に博多コネクティッド規制緩和第2号となるオフィスビルの建設計画を進めており、"点"がさらに増えることになる。福岡市の新たな賑わいスポットが続々と生まれることに期待したい。

インタビュー写真

NTTアーバンバリューサポート 九州事業部 営業担当主任 今村友美さん

  • 本記事は「ひとまち結び」(日経BP)から転載したものです。
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